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吉葉ひろし
吉葉ひろし
novelistID. 32011
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うこん桜の香り

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黒い糸



西山明の手術は終わった。
病室に帰り、アイマスクはそのままであった。2日後には針のような小さな穴が開いたアイマスクになった。その穴からかすかに物が見える。
それは西山に新しい心境を生んだ。
アイマスクで全く見えない時は、食べ物の味ですら良くわからない気がしたが、見えたことで味覚も戻ったのである。
水田百合を初めて見たときから、西山は素晴らしい女性と感じた。親切にしたことは別に下心があったわけではないが、もう一度会いたいとは思っていた。
そんなとき、百合から波子の死の話を聞き、あんな推理話をしてしまったのだ。
絵を描く者が美しさに轢かせるのは自然であると西山は思っている。
西山は独身であった。まだ1度も結婚の経験が無い。収入が不安定だからである。結婚するからには妻となる人には苦労をさせる気にはなれなかった。
作品名:うこん桜の香り 作家名:吉葉ひろし