うこん桜の香り
堀越は倒れたイーゼルを起こして、絵を手に取った。
まだ半分以上が裸のままであった。
「泣いて帰った生徒の顔だよ」
「生徒に頼まれたんです。記念にしたいから」
「先生解りました。大人の話にしませんか」
「どんなことです」
「この絵は燃やすにはもったいないから、何か服を着せて下さい。出来たら貰いますよ。其のほか2,3枚。先生の絵は売れるんでしょう」
「いくらかには」
「商談成立」
「生徒に頼まれたとはいえ反省していますので、他言はしないと約束してくれますね」
「大丈夫です」
「絵の他に10万円払います」
川田は何かの時には脅迫されたと言えばいいと思い、その場で持ち合わせの3万円を渡した。
「悪いな」