うこん桜の香り
稔の過去
百合の夫である稔は、百合と結婚する前に、2年ほど同棲生活ををしていた。其の事は百合には話していない。
大学を出て、銀行に入り、そこで知り合った女性であった。
結婚を前提に同棲生活に入ったのだが、妊娠したら女性は銀行を辞め、正式に籍を入れる約束をしていた。
所がいつになっても妊娠しないのである。女性は産婦人科で診てもらったが異常は無かった。とすると原因は稔と言う事である。女性は子供が出来ないなら別れると言いだし、稔は承知した。
その傷跡を癒すために行ったのが、恐山であった。
そこで百合を知り、看護婦と言う仕事から来る優しさを感じた。この人ならたとえ子供の出来ない自分でも解ってくれると感じたのである。
百合は稔の思った通りの女性であった。
結婚しすぐに子供が出来たと嬉しそうに百合が打ち明けた時、
稔は信じたくは無かった。