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TOKYO SPIRITUALIZER

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序曲

運命は変えられない。
この世界に存在した瞬間から、運命は変えられない。どう頑張っても、どう足掻いても。だって、運命は私達が決めているのだから。生まれてきたり、死んでいったり、動いたり、壊れたり、全部、私達が決めているのだ。だから、どうやっても運命は変わるはずがない。どうして私はここにいるのだろうか。今更考えたって無意味なことは解っている。もう生きている以上は、『カミサマ』がお造りになって下さった以上は、運命には逆らえない。
集中力を総動員させ、赤黒い長髪の男は、ただ、必死で願い続けた。





1

朝だ。
遂に朝が来てしまった。俺は身体を起こし、気だるくベッドから降りると、背伸びをした。窓からの朝日が顔に当たる。カーテンは閉じられていなかった。――嫌いだ、この光は。
俺は2階の自室から、1階のリビングへと向かう為に、階段を下りていった。朝にこの階段を下りる、という動作の最中は、俺にとって物凄くだるいことであって、この階段を下りる、イコール、一日の始まりの合図みたいなものだ。どうして学校に行かなければならないのか。自分が決めたのならしょうがないが、こちら側としては、無理矢理行かされている、というのに近い。毎日同じことを繰り返しては、帰宅する。それのエンドレスであって、学校とは、無限に伸びていく、終点のない螺旋階段のようなものなのだ。
階段の話はもういい。思考力の無駄だ。
階段を下りて、リビングへと繋がる廊下へと出る。体内に篭っていた布団の温もりは、もう消えていた。トーストの匂いがする。……またトーストか。昨日も、いや、最近は毎日トーストのような気がする。まあ、米よりもパンの方が好みの俺には有難いことなのだが。
――と、どうでもいいことに思考を巡らせている間に、リビングへと着いてしまった。
「おはよう、雅」
「……おはよう、母さん」
「どうした、雅、朝になるといつも元気がないな…、大丈夫か」
「ん、あぁ、大丈夫、父さんの思っているより、元気だから」
これは嘘だ。俺は全く元気じゃない。元気ではない、というより、気分が悪いのだ。苛々する。父さんと母さんは嫌いではない。寧ろ好きだ。だが、朝になると何もかも嫌になるのだった。喋るのが面倒になる。
「それよりも早くご飯が食べたいんだけれど」
作品名:TOKYO SPIRITUALIZER 作家名:時環れいじ