小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

ハティ・フローズヴィトニルソン

INDEX|1ページ/3ページ|

次のページ
 
「ハティ・フローズヴィトニルソン」

私はイジメられている。

きっと、私が登校すると、上履きに画鋲が入っていて、
机に「死ね」とか「あばずれ」とか時代錯誤的な落書きがしてあって、
牡丹が一輪、花瓶に入っているんだ。

猫の死体とかだったら最高だな。生首だけでも可。

これまででいちばんいいと思ったのは、ブーブークッション。
座布団などで隠すことなく、椅子の上においてある。
・・・バレるのに。バレるのにそんなことをするなんて。

授業が始まる。私はできるだけ目立たないように下を向き、
ノートをとるふりをしている。

「佐藤久美」

というのが私の名前であるので、あだ名は「くさとう」とか
「くさみ」もしくは「くそみ」だ。

「佐藤久美」

「佐藤久美、放課後生徒指導室へきてください」


担任がそう言うので、私は
「嫌ですが、しょうがないですので行きます。」と言った。もちろん行かないが。


「久美さん、あなたはね」
「本当は、自分で思ってるよりずっといい子になれるのよ。」
「他人を受け入れる前に、自分を受け入れないと」
「それからね、これは先生の電話番号・・・」

「はぁ・・・」

 ・・・あほな担任だ。本当に生徒指導室に私が来ると思って練習している。
私は性格が悪いので部屋に入らず、廊下で聞き耳を立てている。

「あほな担任だな・・・」 と、自分でも言っている。

「ほんとはそこで聞いているんでしょう!!」
 「!!」
「・・・そんなわけないか」

 少し驚いてしまったでわないか。 ・・・さて、帰る。

帰り道で、私は考える。私はどんなイジメをうけているのだろう。
たとえば今、電車で座席に座っている中年男性は私のことを視姦しているし、
隣の女は私の靴をヒールで踏むのだろう。

・・・あ、視姦するほど私は魅力的でもないか。では、視殺。
あの人の頭の中には私のバラバラ死体が浮かんでいるのです。

ああ、足がいたい、踏まないで。 と思ったら本当に踏まれていた。


「あっ、すみません!!ごめんなさぁい!!」とか言ってる。
「いえいえ・・・」なんて私は普通の答え。つまらない。

つまらない、人間! ・・・それは私。

つまらない人間はみんな死んでしまえばいいのに。
要するに人類が滅びてしまえばいいのに。
世紀末に、核による戦争が起きてしまえばいいのに。
せめて私だけでも巻き込まれて死ぬといい。英雄なんてどうせいないし。

火山が爆発しようが、隕石が落ちようが、人間はたぶん滅亡しない。
少しの環境の変化はあるだろうが、どうせ生き残るだろう。
人間を殺しきることができるのは自然じゃない。人間なんだ。

たとえば、女性にだけ効果のある殺人ウィルスを作って、自分にはワクチンを注射し、
ジェット気流にのせて世界中ばらまく、という、中学生並の妄想をしてみる。
その後私は自分の子宮をカッターで切り刻むのです。子供が産めないように。
男どもが嘆き悲しみ、ただ一人の女の私を見つけ、子供が産めないとわかったときの絶望感!!
ああ、私はただその瞬間を見るためだけに殺人ウィルスを作れたら!作れたらいいのに!!
そして私は蹂躙されることでしょう。何人もの男に、です。 という、中学生並の妄想をしてみる。

妄想。。。全部妄想なんだよ。
そうだ。私はいじめられてなんていない。全部妄想なんだよ。
机に落書きなんてされてないし、猫の生首なんて置いていないんだ。
そしてブーブークッションは自作自演なんだよ。
あー、まったく私なんて死んでしまえばいいのに。

などと思いながら私は次の日も、その次の日も、その次の次の日も、変わらない人生を送っていくのです。
それで満足できればよいのだけれど、残念ながら私はそんな人間ではない。

今日など、古風に下駄箱にラブレタアなるものが入っておりました。
はて、これはつまりアレですね、私を呼び出して小馬鹿にするか、誰も来ないか、の2択。
破って捨てるか・・・いや、それでは面白くない。

それではどうなったら面白いか?
放課後、近くの喫茶店で待っている「かもしれない」人間をどう使うべきか?
問題は誰が待っているか?もしくは待っていないか? だろうけれども、
どちらに転んでもさして支障のない策を講じるべきだ。つまり、

私の名前のところをだれか他人のもの・・・適当な人材が思いつかなかったので
ゲタ箱の名前をながめた。・・・そうだ、隣のクラスのこいつ・・・杉山・・・男か女かわからんが・・・
の名前に変えて、まるまる文章をうつしてノートに書いたものを入れておこう。結果なんて知るか。

これで「もしも」だ、もしも、杉山という人間が「同じことを私にやったら」・・・つまり、
私が書いた文章に不快感を示し、私と同じ行動をとり・・・他人にラブレタアをおしつけ、
その矛先がもしも、万が一、私であるならば、私はそいつと仲よくなれると思う。

というのは嘘だ。変人と変人が同一の考えを持つ場合、たいがいは磁石の同じ極のように反発する。
そもそも杉山はそんな行動とらないし。今、読んでるし。(男だった。)・・・・普通に捨てた。
ああつまらない。捨てることないのに。かわいそうに、原文を書いた奴。


授業中、死について考えている。
死後の世界というのはあるのだろうか。
肉体が滅びて、精神だけが生き残るということがあるのだろうか。
肉体と精神の結びつきについて、心身二元論ではどうだったか、忘れてしまったが。
とりあえず明確に、幽霊というものがあるとするならばそれは、万人に理解が得られる方法で存在しているべきで、
そうでない現状では幽霊の存在、もしくは死後の世界の存在はあるともないとも言えない。
もしも死後の世界が「ないなら」、死を恐れることはないと思うのだ。
私の過去のアホな過ちであるとか、傷跡であるとか、そういったのもは私とともに死ぬ。
生きている人間達はそれを覚えているかもしれないが、私自身の精神が蒸散するなら問題ないだろう。
ただし。死後の世界があるなら、話は別である。
死後の最大の「責め苦」は地獄に落とされるとか、舌を抜かれるとかそういった類ではない。
過去の自分の、忘れかけていた、しかし心の底に滞流していたことまでホジクリカエサレルことのほうがよっぽど嫌である。
まあ、ごく普通の分析をするならば、人間の死に対する恐怖心が死後の世界という妄想を作ったに違いないのだろうが。

だがしかし、私の死後に私のことを覚えている人間たちがいるというのは気に入らない気もする。
だから私はどうせなら人類を滅亡させてやりたいんだ。

絶対に、こういう感情を持っている人間は少なからずいるだろう。
そうでなければガンダムやエヴァンゲリオンは流行らないんだ。
プロトケラトプスやアマノカリスにノスタルジイを感じないだ。それは関係ないか。

ただし私はそれを一人でやり遂げたい。なぜなら私は人間不信で、ナルシストだから。

「佐藤さん」 「?」 自分の苗字を呼ばれた気がした。

私の苗字(名前も)は一般的であるが、この場所に佐藤はどうやら私しかいないようだ。

「あれは嫌がらせかな? 僕はそんなところが好きなんだけどな」