「レイコの青春」 37~39
議長役を任された陽子が、全員の顔を見まわしてから
いまだに園長代理を務めている幸子に向かって、声をかけました。
異論のない雰囲気を読み取った陽子が立ちあがります。
会議の始まりを宣言しようとした、まさにその瞬間での出来ごとでした。
静まり返っていた廊下を、数人の足音が近づいてきます。
もう全員揃っているのに、今頃になって誰だろう・・・と言うざわめきの中、
ドアを開けて、まず美千子が現れました。
「こんばんは。
ごめんなさいね、みなさん、突然に。
今日は、資金集めの会議を開くという話を聴いたもので、、
実は、心強い援軍の皆さんたちを引き連れて、乱入気味に駆け付けました。
突然のことで申しわけありませんが、、
とりあえず皆さんを紹介をしたいのですが、
いいかしら、議長の陽子くん。」
「はい、私には、まったくもって、異存などはありませんが、
でも・・・・とりあえず皆さんや、園長代理の意見もお聞きしないと。」
指名するまでもなく、園長代理の幸子が、
(園長先生がいつも見せていた、目をしっかり細める)笑顔をみせながら、
真っ先に立ちあがりました。
「この会の前身にあたる、建設準備会の発足当時から
ず~と、事務局長を担当されていた美千子さんが、実に久々の登場です。
実は昨日、美千子さんから、資金集めについての妙案が有るので、
是非全員で検討してほしいという、申し入れがありました。
非常に頭の痛い懸案中の事項でもありますので、私はよろこんで
受け入れたいと考えました。
皆さんにも異存が無ければ、早速自己紹介などをお願いしたい
私は思っていますが、
皆さんは、いかがでしょうか?。」
幸子の一通りの説明が終わるのを待ちかねて、
全員の承諾の返事を聴くその前に、すでに美千子の背後からは
品の良い初老の婦人が、居並ぶ委員たちの目の前に登場をしてしまいます。
和服が良く似合う初老の婦人は、そのまま幸子の隣へ
並ぶようにして立ってしまいました。
作品名:「レイコの青春」 37~39 作家名:落合順平