エイユウの話 ~春~
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彼の魔力も申し分ない量でした。全てで培った知識を、魔力として操ることが出来るのです。もちろん魔力に系統は存在するため、専攻以外の魔術を行うことは出来ませんでしたが。
通常知識だけではどうにもならないはずの技術まで、次々と編み出していきました。教師にそれを見せるとき、彼は一番恍惚としていた気がします。彼の向上心は強く、また、教師に認めて欲しいと思ってくれている様子も人一倍でした。観察し始めて初めて気付いた、彼の特徴です。
もしかしたら、彼には認めてくれる誰かが必要なのかもしれません。法師になれば、働くことが当たり前で、誰もほめてなんかくれなくなるのです。それでは、彼が彼のままでいることは難しいのかも知れません。
私は、彼の弱点と言うべき点を知りました。
――――――――――『黄金の術師(ジャーム・エワ・トゥーロル)』第一章第一部より抜粋
作品名:エイユウの話 ~春~ 作家名:神田 諷