エイユウの話 ~春~
彼の叫びは、女子グループの人たちの大きな笑い声にうまくかき消された。次に地の闘技場に保険医を呼びだす校内放送が入る。いきなり熱のスイッチが入ったキサカに驚きながらも、ラジィは負けじと言い返す。
「キースだってアウリーのこと気にかけてたくらいよ!好きかもしれないじゃない」
「それがあいつの気持ちを無視してんだ!少しは察しろよ!」
「察するって何よ!あたしにキースの気持ちなんて、解るわけないじゃない!」
その言葉に、キサカは遅れながらもハッとする。恋愛に疎い自分が解るほどだって、それが恋情か友情かの判断は個々で異なるものだ。キースの恋情を、ラジィが友情ととらえていても可笑しいところは何もない。
校内放送が止み、食堂に静けさがまたもどる。急に押し黙ったキサカに、「もういい」それだけ言うと、ラジィはさっさと席に戻っていってしまった。
作品名:エイユウの話 ~春~ 作家名:神田 諷