天界大戦争 超伝奇
ミカエルとて、兄の理想主義はわからないでは無かった。だが行きがかり上、ミカエルとしてもそれでは、光軍にとはいかない事情があった。ミカエルは頭もよく、彼を人はパーフェクトエンジェルと呼んでいた。彼は、兄の理想主義を危ぶんでいた。”民主主義”確かにそれは、理想主義ではある。されとて、相手は「主」である。この得体の知れない、偕老に、兄の理想主義が勝てるのだろうか。常に自己の保身を考えていた、この男は,敢えて「主」の側についた。それは、彼の保守性と勇気のなさのなせる、愚行でもあった。
しかし、今や完全なまでの劣性、配下の者もほとんど逃げてしまった。だが、彼は負ける戦ならしないのである。彼は誰も知らない「主」の本当の目的を密かに盗み見てしまったのである。「私は、運がいい」ミカエルはひとりほくそ笑むのであった。
「主」も残酷な計画を立てたものだ・・・ミカエルはその目に残虐な光を輝かせていた。
かって、戦火は切られた。満を持してシリア軍はゴラン高原をイスラエルに向けて進軍した。結果は火を見るよりも明らかだった。もはや、ミカエルの率いる「主の軍勢」は壊滅的状態であった。
だが、これは、これから起こる、とんでもない大どんでん返しの本の幕開けに過ぎなかった。
ミカエルは、高らかに笑いころげた。「私は運がいいい・・・・」
シリアの夕日は血の色に染まっていた。