ツイン’ズ
10_直樹VSナオキ
某○○学園高等部……今は跡地だったりする。跡地にしてしまったのは私だ。……ふっ飛ばす気はなかったんだ、ふっ飛ばす気は……ね。不可抗力ってやつだ。
あの日の深夜私はタロウくん3号の試運転をしていた。そしてあいつに出くわしてしまった――。
この辺でタロウくん3号の試運転をできる広い敷地と言えば学校か愛の家だろう。そこで私は妖狐先生とともに学校へと向かった。
「ここでなら思う存分試運転ができる……ってなんでおまえがいるんだ!?」
「……それはこっちの……セリフ」
学校に着いた途端になぜこいつがいる。なぜこいつはグランドの中心にいるんだ!?
「……星が……見たかった……ただそれだけ」
そう言われてしまったら何もそれ以上は言えない……言ってもいけない、触れてはいけない。
「直樹くんこそ……玉藻先生と……デート?」
「あらん、たしかに若い子は好きだけど……」
「……その気[ケ]は……なぃ」
宙の右手にはめられた人形が前に突き出された。
「オマエは直樹じゃないな! オマエは誰ダ!!」
……鋭い。
「ナオキちゃん、秘密を知っている者は生かしてはおけないというのは鉄則よぉん」
「どーゆーこと?」
「つまり……」
妖狐先生はタロウくん3号に取り付けられている赤くて丸いボタンをぽちっと押した。
――何も起こらない。――何も起こらない。――何も起こらない。――発射された!!
タロウくん3号に取り付けられたロケットパンチが宙に向かって発射された。
「!?」
このマッドサイエンティストがっ!! 宙に宣戦布告するなんて普通じゃない……だからマッドなのか。
眼前に迫るロケットパンチに全く動じない宙。彼女はこう呟いた。
「綺麗な星が……見れるかも(死)」
ロケットパンチの軌道が宙をまるで避けるように変わり学校へと突っ込んだ。爆発炎上する学校……綺麗なお星様みたいだぁ〜。
次の瞬間には私と妖狐先生は必死こいて逃げていた――。
「そんなことが昨日の深夜3時ごろにあった」
「昨日の3時だと!?」
危なかった。実に危なかった。俺があの学校を出たのはだいたい1時半ごろだぞ。ヘタしたら学校と共に心中してたかもしれん。
……待てよ。学校を壊したのって……宙なのか? 宙は明らかに狙って学校にロケットパンチの軌道を変えてるだろ。計画的犯行だ!!
「つまりタロウくん3号をここに持って来たのは私だ、それは認める。だが、ロケットパンチのスイッチを押したのは妖狐先生だし、学校を消滅させたのは宙だ。このことから導き出せる結論は私は悪くないだ!」
「それはわかったがおまえが何が言いたいのかが見えてこない」
「つまりだ。宙こそが諸悪の根源、絶対超悪だ!!」
「……意味がわからん」
全くもって意味がわからん。さっきっからコイツは何が言いたいんだ。
「一緒に宙を倒して世界を救おうではないか!」
「はっ!?」
何をいきなり、唐突な!? 宙を敵に回すなんて一般高校生がしていいわけがない。その行動は人間として間違っている!!
「いきなり何言うんだよ。宙を敵に回すなんて馬鹿げてるぞ!」
「そうか……交渉決裂だな」
アルテミスの腰に装着してあった弓が構えられ、鋭い矢先が俺に向けられた。
「は〜ははははっナオキ♂、そーゆーわけで今日こそ決着をつけてやる!!」
弓矢が放たれ風を切る。
「どーゆーわけだよ!!」
ブースターを全快にして空に飛び上がり矢の攻撃を避けると俺は攻撃に取り掛かろうとした。がしかし、俺の目の前にはアルテミスが瞬時に回りこんでいた。
「このアルテミスをタロウくんシリーズと比べてもらっては困る。ザ○とは違うのだよ、ザ○とは!!」
「最後のセリフは意味わかんねぇ〜ぞ」
ありゃ、ガン○ムのセリフだろがーが。正確に言うと第12話『ジオンの脅威』でランバ・ラルがハワイ付近にてガン○ムに言ったセリフだ。
「モビルスーツの性能の違いが、戦力の決定的差でないことを……教えてやる!」
「それもガンダ……!!」
巨大な矢の脅威が俺に襲い掛かる。紙一重で、時には海老反り、時にはマト○ックスのポーズ(どっちもいっしょやんけ)で避ける俺。
全ての矢を奇跡的に避けた俺は体制を整えようとするがそこにアルテミスの容赦ないかかと落しが脳天に炸裂!! そのまま俺は上空15メートルから地面に叩きつけられてしまった。
「……このスーツを着てなかったら死んでたな」
「自由落下という奴は、言葉でいう程、自由ではないのでな(byシャ○)」
「そのセリフの使いどころ間違ってるし、自由じゃなくってオマエが叩き落としたんだろうが!!」
俺のセリフをあざ笑うかのように俺’は口の両端を少し上げ言い放った。
「戦いとは、いつも二手、三手先を考えて行うものだ(byシャ○)」
アルテミスの矢が俺に照準を合わせている。クソっ! こーなりゃー一か八かだ!! ちなみの俺は一か八かが好きだ!!
捨て身の覚悟で相手にドロップキックを仕掛ける俺だったのだが!?
「甘いな(byシャ○)」
の一言と同時に放たれたアルテミスの熱い張り手が俺の頬に喰い込む。……くっ、力の差は歴然だったか。こんな大きさの違いは反則だ! こんなヤツに勝てるか!!
「もげーっ!!」
張り手を喰らった俺の意識が遥か彼方へと飛ばされてしまった――。
人はよく言う、人間死の直前に人生を走馬灯のように見ると……。俺も見た。それも2度目だ。
これもまた人はよく言う、人間死にそうになって意識を失っているとき、三途の川とか見たりするって……たしかに前回は三途の川だった。だが今度は……?
「ナオガイガーV立つのじゃ、立つのじゃナオガイガーV」
「ううん……」
俺が目覚めるとそこには見知らぬじいさんが立っていた。
「立ち上がるのだナオガイガ―Vよ」
「あ、あなたはにょぷー仙人!?」
俺の前に突如現れた老人はかの偉大なるもにゃった仙人だった。しかし、このお方がなぜ俺の前に……?
「HO〜HOHOHOHO、いかにもわしはさるまた仙人じゃ」
「どうしてあなた様が?」
「ナオガイガーVよ、今こそ星川博士の言葉を思い出すのじゃ」
「星川博士の……言葉……そうか、わかったぞ。ありがとうございました、にゅにゅにょ仙人!」
「HO〜HOHOHOHO」
――むにゅ仙人の姿は霧のように空間に溶けて消えてしまった。
「――はっ!?」
俺は死の淵から目覚めた。……今のは夢か幻か……どうやら俺は一時的にイッてしまっていたらしい。
星川の言葉か……しっかり受け止めたぜおやっさん!!
「俺’戦いはこれからだ!」
「は〜ははははっ、どこからでもかかってくるがいい!!」
「星川の作ったこのパワードスーツの実力を見せてやる!」
「みせて貰おうか、星川のパワードスーツの性能とやらを!」
そのセリフも赤い彗星のパクリじゃん!!
なんて思っているのも束の間、アルテミスは矢の切れてしまった弓から剣へと武器を持ち替えて俺に挑んできた。いい度胸だ、返り討ちにしてやる!
俺はベルトに付けられたボタンを押した!
作品名:ツイン’ズ 作家名:秋月あきら(秋月瑛)