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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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ツイン’ズ

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 天に小さな煌きが起きたかと思うとすぐに光の柱が地上に向かって堕ちた。
 光の直径は1メートルほどではあったが、それはある国のある都道府県のある市町村のある屋敷の天井を貫き、地下牢まで達し石畳の床に5mもの穴を空け牢の鉄格子を消し飛ばした。
 俺は人間の限界まで目を丸くして、腰を抜かした。当たり前だ、穴は俺の足元に空いたんだよ!! 殺す気か!!
「だぃじょぶ……手加減してもらったから」
 手加減って誰にだよ。この力はなんだ人智を超えてるぞ。反則技だ!
 宙の力を再び目の前にした俺’は苦笑している。
「見ただろう直樹♂、あんな不条理な宇宙の力を使うなんて反則だろ」
「俺もそれには同感だ。だが俺が逃げるためだしかたあるまい」
 そうだ俺はここから逃げなくてはいけない。なんでこんなところに連れてこられたのかはわからないが今は逃げることが先決だ。ってことで、
「逃げるぞ宙、美咲」
 俺の合図で二人は一斉に走り出した。
 俺’を押しのけて、階段を登り廊下を抜けて玄関を飛び出す。
 澄み切った青空が視界に広がる……じゃなくって。早く逃げなくては、追っ手が来る!
「待て直樹♂逃がさんぞ!」
 廊下をダッシュする俺’。その後ろには玉藻先生&愛の姿が!! どうする俺? 走って逃げてもラチがあかない。
 とその時だったリムジンが住宅街を駆け抜け俺たちの前に止まったのは!?
 運転手が窓を開けて顔を出した。
「どうぞお乗りください」
 どういうことだ、これは罠か? だが俺には選択の余地は無かった。後ろからは追っ手が来るし、何よりも美咲と宙がさっさと乗り込んでしまっていた。
「直樹なにやってんの、早く乗って!」
 美咲に言われるまま俺はリムジンの中に飛び込んだ。俺を乗せたリムジンはアクセルを全快にして猛スピードで走り出した。
 ……車に乗り込むと見知らぬメイドが乗っていた。誰だコイツ!? ときょとんとしている俺のことをこのメイドは微笑んで見ている。もしかして惚れられたか!?
「初めまして直樹様、わたくし鳴海家にお使い致しておりますメイド長の睦月鏡花[ムツキキョウカ]と申します」
 ぺこりと頭を下げた鏡花さんに合わせて俺も慌てて頭を下げた。
「あっどうも」
 しかし話がさっぱり見えてこないぞ。一体全体何が起こっているんだ?
 展開がめちゃくちゃでさっぱりわからん。そー言えば宙も『実はこの物語は途中打ち切りになったの〜』とか言ってな。この物語ってなんだよ。何のこと言ってんだ?
「……答ぇは簡単……9月15現在でこの話の打ち切り……つまり、この世界を創ったカミサマのせぃで……ぁなたともうひとりのぁなたとの決着を早くつけなきゃぃけなくなったの」 
「意味がわからん」
 意味がわからない。わかるのは宙が飛んでることくらいだ。
「……心外」
 バシッとアリスの平手打ちが俺の頬に炸裂! 殴られ過ぎだ俺。
 リムジンは俺たちを乗せて住宅街を駆け抜ける。……どこに向かってるんだ!? まさか拉致監禁か!!
「あ、あのこの車どこ向かってるんスか?」
 俺は鏡花さんを瞳を怯える小動物の目で見つめた。
「この車は只今鳴海邸へ向かっております」
「愛んち? なんで、いや、そーじゃなくて、なんで俺らは愛んちの車に乗ってんの?」
 鏡花さんはおもむろにジュラルミンのアタッシェ・ケースを取り出しフタを開けて俺に中身を見せた。
「……これは!?」
 ケースの中に入っていたのは札束!! 俺は今から買収されるのか!?
「1000万円あります。これで愛様を元に戻して頂きたいのです」
「はっ!?」
 俺は宙と美咲を見た。だが二人はなぜか俺と目線を合わせようとしなかった。なんだ、後ろめたいことでもあるのか?
「宙様と美咲様にはもう契約書にサインしてもらい契約金もお支払いしました」
「お前らいつの間に!?」
 だが……俺ら一般の学生が1000万もらえるなら……。
「……4500万」
 宙がぼそりと呟いた。
「はっ!? 今なんて言った!?」
 宙は口を開こうとはしなかった。美咲のほうも見たが、こいつも俺とは目線すら合わせずに何も言わない。
「宙様と美咲様には4500万円ずつお支払いしました」
「なんで俺だけ1000万円なんだ!?」
「契約金は1億で御座います」
「お前ら!!」
 美咲は窓の外を見ながら冷ややかな目をしている。
「だって、その場にいなかったの悪いのよ。そもそも全部あんたのせいでしょ」
「そうじゃないだろ。それにこの事態を引き起こしたのは俺じゃない、俺’だ。ちゃんと三等分しろ!」
「……友達を助けるのに……ぉ金を要求するなんて……直樹くん……人間として……それはどぅかな?」
「お前も金もらってんじゃんか!」
「……軍資金が必要だから……貰った」
 軍資金ってなんだ? ……いや、宙についてはあまり深くは考えてはいけない。きっとイタイ目に遭う。
「わかった金はいらない。愛は俺が責任を持ってどうにかする」
「じゃあ直樹の分は私が貰うねv」
 ……美咲に取られるのしゃくだが、俺の目的は金じゃない……そう金じゃない、金じゃない、金……正義のためだきっと。
 程なくして車はちょー大豪邸の前に止まった。ここが愛の家だ。総敷地面積は約10平方キロメートル。わけわからん大きさだ。
 リムジンで本館の玄関まで行くのにだいぶ時間がかかった。
 車から降りた俺らは鏡花さんの後に続いて屋敷の中へ入った。玄関ホールには使用人たちが左右に列を成し道を作り、一斉に頭を下げて歓迎のあいさつをする。寸分の狂いも無い光景は圧巻だ。
 屋敷の中を歩いて数分。俺らはエレベーターに乗っていた。下へ下っているのはわかる……だが、どこまで行くんだこのエレベーターは? 
 エレベーターのドアが開くと、そこは知らない場所でした。
「……なんだここは!?」
 さっきの屋敷の中とはがらっと雰囲気が変わり、金属でできた壁と白衣の研究者っぽい人たち?
 俺はいったいどこに来てしまったのか!?