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株式会社神宮司の小規模な事件簿

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―はて、なぜこんな怪奇現象ブームが巻きおこってしまったのだろう?

 社内で社長の次に顔の整っている色男若松氏は考えた。
 彼はご存知の通り真面目純粋爽やか青年であり何故この会社に入社してしまったのかは謎である。おそらく詐欺か何かにあったのだろう。
 とにもかくにもそんなことを考えながらむうとした顔でお昼のキャベツを噛じっていた彼に話しかけるものがいた。
 隣の席のサンドゥーさんである。サンドゥーさんは特に何の噂もないことで有名であった。要するに無名だった。
 サンドゥーさんは気さくに話しかける。
「若松君、キミ怖い話スキなのか?」
「私はあまり好まんなぁ。なんだ、君も怪談ブームに乗っかっているのかい?」
 サンドゥーさんは目を瞑って首を振る。「いんにゃ。ソンなことナイヨ。デモちょっと気になるコトあったのヨ。」
 サンドゥーさんはそう言うと意味ありげにウィンクした。若松氏はいずまいを正し話を聞くことにした。真面目なのである。
 そんな若松氏の姿にサンドゥーさんも益々話す気力が盛り上がったのかぴんと背筋を伸ばし重々しく語り始めた。
「このオフィス代田さんいう人いるネ?彼女おかしい。ついこの前のことダヨ。私夕方の4時ぐらいにバッドマン見たくて会社早退したヨ。そんでアピタ向かったヨ。したら途中で代田さんブリッチしながら頭を360度回転させてTSUTAYAに入ってったヨ。口にTカード食わえてた。それは別にいいんだけど、ここからが驚きヨ。私一種に映画見るテ約束してた神宮司社長全然来ないから会社に電話した。そしたらなんて言ったと思う?『すまんサンドゥー君。今代田さんととある企画書について語りあっているのだ。次の回にしてもらえないだろうか。』ダヨ!私ビックリしてスーツ破くかと思った。だって代田さん目の前にいるヨ!代田さん双子ナノカ?」
 可哀想な若松氏はキャベツを取り落とした。ごろんごろんとキャベツは転がっていきその場にいた社員数名がドミノ倒しの様にキャベツに躓き転倒していった。
「…その話は本当なのか?」
「本当ダヨ。私会社にしか嘘つかナイ。」
 成る程サンドゥーさんの瞳は真剣そのものである。
 若松氏は厳めしい顔つきで言葉を絞り出した。「…実は昨日私も同じような事態に出くわしたのだよ。その時は私の気のせいだろうと思っていたが…やはりそうか。」
「ナンネナンネ?!」サンドゥーさんは若松氏にのし掛かる。
「重いではないかやめたまえ。…実はだね、私は昨日仕事帰りに道端のゴミを広いながら歩いていた。そこはとても狭い路地でね、自動車は一方通行になっていた。と、そこへ黒いハーレーがやって来た。私は慌てて電柱にしがみついた。電柱にしがみついていたからよく運転手の顔が見えたのだ。そこにいたのは確かに代田さんだった。ハーレーはすぐに走り去っていった。するとハーレーが来た方向からマウンテンバイクがやって来たではないか。…なんと運転していたのは代田さんなのだよ!私は少し動揺しながら挨拶をした。代田さんは答えてくれた。私はそこで聞くことにした。『代田さん、君はハーレーに乗るかい?』代田さんはキョトンとした顔で答えた。『えぇ、黒のハーレーなら持っております。何故ご存知なのですか?』私はいやいや暑さ故の幻を見たのだと誤魔化した。彼女は憐れむ様な顔つきをして去っていった。そのすぐあとだ。前を向くとランボルギーニが喧しい音を立て走り込んできた。私は嫌な予感がし運転手を覗きこんだ。すると案の定代田さんがいるではないか!…私は暑さ故の幻を見たのだと自分に説得して事をすませた。」
 話終えると若松氏は深い溜め息をついた。
 サンドゥーさんも汚職報道に耐えている政治家の様な険しい顔をしていた。
 そして案の定といえば案の定この話はオフィス中に広まっていくことになる。