レッツ褌
ジャックは思わず百合子の手を取り、両腕で彼女の体を抱えた。百合子はジャックの両腕に抱えられると、二人は口と口を触れ合わせ、激しいキスをしてしまった。思わず、そうせずにはいられなかった。
ああ、こんなことしていいのか。ここはカナダじゃないぞ。
だが、周囲は大感動だ。歓声が上がり、大盛況だ。男衆立ちも「ジャックさん、百合ちゃん、いいねえ」と声を上げている。
その後、御輿は境内に入った。とりあえず御輿を台の上に置いて、男衆は御輿から離れる。とりあえず、褌を外し風呂に入るのだ。この後も、様々な祭りイベントがある。
ジャックは、風呂場に行く前に百合子とアンヌのところまで行った。
「楽しかったか」とジャック。アンヌに対して言った。
「ええ、少しずつ気分が晴れていく感じ。過去のことを悔やんでも仕方ないもの」とアンヌ。
「ジャックさん、一緒に風呂に行こう」と太郎が後ろから声をかけた。
「OK」とジャック。太郎は、百合子を見つめる。だが、もう未練はないという感じの晴れ晴れとした表情だ。百合子もほっとした気分だ。
ジャックたちが銭湯に向かう姿を見つめ、アンヌが百合子に言った。
「あの男の子は誰? とってもセクシーなお尻ね。お近づきになりたいわ」
アンヌは、目を輝かせ太郎の尻に視線を集中させた。
大盛況の祭りが終わって一年近くが経った頃、ジャックは泰蔵と一緒に漁船の中にいた。漁師として泰蔵から修業を受けている。泰蔵は、すっかり元気を取り戻し、漁に戻った。ジャックは、あの祭り以来、海に関心を示し、泰蔵と同じ漁師になる決意をした。なので、泰蔵から修業を受けている。これから、日本で暮らしていくつもりだ。
漁から帰ると、家では腹を膨らませた妻、百合子が待っているのだ。百合子は、そろそろ出産だ。
ところで、百合子の幼馴染みの太郎はカナダにいる。それもジャックの妹アンヌと。アンヌは太郎の尻に惚れ、尻を追い回した挙げ句、太郎をものにしてしまったらしい。そして、二人でモントリオールへ。国際結婚を果たし、今は新婚生活。その回復力には並みならぬものがある。褌の魔力とはすごいものだ。
家の玄関から、隣のおばさんが大慌てで現れた。
「泰蔵さん、ジャックさん、大変よ。百合ちゃんが急に産気づいて、丁度、いま病院に運ばれたところなの」
予定ではあと一ヶ月先だった。ジャックと泰蔵は急いで病院に向かった。
そして、子供が生まれた。元気な男の子だった。偶然にも、その日は夏祭りの日だった。おかげで泰蔵とジャックは御輿を担げなかった。だが、この日に生まれたからには、きっと祭り好きな子に違いない。そうだ、彼が大きくなったら、褌を締めて一緒に御輿を担ごう。
終しまい