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「レイコの青春」 34~36

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 そこから書き始められた綾乃ちゃんの記録は
ほとんど毎日にわたって短いメモが、気がついたままに書きこまれています。
日によっては、2つも、3つも立てつづけに間髪をいれずに
書きこまれている時もありました。


「微熱があります。風邪の気配はあるかしら、」
「少し咳き込んだので、部屋の湿度をあげてみました。」
「先ほどからは、すやすやと寝ています」 私も一安心。


「どうしたのかしら、今日は、朝からご機嫌ななめ・・・」

 他愛もない事がらまで含めて、感じたままのメモ書きが、
11か月にわたって、綿々と書き綴られています。

 問題の、亡くなったその日のページだけが、
いつも綺麗に、形よく並んでいた園長先生の文字が、
ここだけ例外に乱れています。
綾乃ちゃんの容態とその対応の様子を、刻々と時間を追いながら
そのすべてを拾い集め、それらが2ページにわたって書き込まれています。


 園長先生が、最初に綾乃ちゃんの寝姿を
確認したときの時間が、まず書きこまれていました。
それから、10分後に2度目に確認に行った時には、すでに
うつぶせ寝状態で有ったことも、ちゃんと書かれていました。
しかし特に気にすることもなく、そのまま
事務の仕事へもどってしまいました、と追い書きがありました。
此処の部分の文字だけが、しっかりとした清書になっています。
おそらく後日なってから、園長先生が書き足したものと思われます。


 3度目の見回りは、それからさらに20分後のことです。
見回りに回った園長先生が、前回と同じうつぶせ寝姿勢の綾乃ちゃんに、
違和感を感じ、抱き上げた時には、すでに呼吸が停止している
状態であったと記されています。


 保母さんに救急車の緊急出動を依頼して、
自身はすぐに、人工呼吸の手配をしてその救命活動に入りました。
救命活動を始めた時間、人工呼吸の回数、
救急車の到着までの所要時間などなど、
詳細なそのときの時間と展開の様子が、リアルタイムで書き込まれています。
ノートの左のページには、時間を追った当日のメモ書きが並らんでいました。
右のページには、後日に書かれたものと思われる清書した記録が
対比するように冷静に並んでいます。

そして、その最後の部分は、こんな言葉で締めくくられています。
おそらくそれは、入院中に合間を見ながら書き記したもののようです。