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切っ先にひっかけて

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体がかるい。今日だけじゃない。明日も、明後日も。理由は、毎日担いでいた防具を持っていないから。
 顧問と喧嘩をした私は、剣道部をクビになったのだ。スカスカのスクールバッグの中には、化粧道具とデコられた携帯の充電器、それとブランドものの長財布くらいしか入っていない。いわゆる、私はギャルだった。
 足の爪には凝ったペティキュアを施し、面の下にはつけまつげ。チャラチャラした見た目に反し、剣道の腕は確かなもの。それら全てが、顧問のヒゲには気に食わなかったのだろう。たった四ヶ月の剣道部生活だった。

 確かに、私という存在はあらゆる点でイレギュラーだっただろう。戦績うるわしい名門剣道部に、派手な茶髪の女剣士は。
 汗臭い短髪ばかりで色気のない剣道部には、案の定、女部員は私だけだった。慣れない黒髪で部活動見学に参加した、入学したての私は、マネージャーならというヒゲの申し出を蹴り飛ばし、次の日には防具一式を担いで剣道場に上り込んだ。
 経験者だった私は、実力で周りを認めさせて、強引に「剣道部」の一員となった。力で男に適うはずはないが、女にはしなやかな肢体と場を「読む」力がある。力押しで勝ちを狙ってくるラフなプレイヤーに私は負けなかった。
 なんとか男子高校生用の体力トレーニングにも付いていき、ギャルで剣士の変わった女でも他の部員と打ち解けることができた。男兄弟が多く、漫画の影響で剣道を始めた女は、他の男子部員とさしたる違いはなかったのである。
 だけど、私は剣道部を辞めさせられた。強くても、テストの成績が良くても関係ない。理由は、私が女で、ギャルだったから。
作品名:切っ先にひっかけて 作家名:塩出 快