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「レイコの青春」 28~30

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 その可能性についての検討がはじまったものの、
もう一つの壁が、原因究明のための障害になってしまいます。
この時代では、死因解明のためとはいえ、乳幼児を
解剖するということは皆無に近く、きわめて稀な例にすぎません。
「これ以上、綾乃に辛い思いはさせないで・・・」
その美千子のひとことで、すべてが終わってしまいます。



 警察でも、綾乃ちゃんの口の周辺へまとわりついていた
柔らかい毛布と、シーツの存在が問題になりました。
しかし、生後間もない乳幼児とは異なり、すでにハイハイもできて
つかまり立ちまでもできた綾乃ちゃんが、無抵抗状態のままに、
窒息したとは考えにくいものがありました。


 結局、突然死の可能性もあるという曖昧な表現を残したまま、
死亡原因を特に強調せずに、きわめて稀な例という注釈を付けながら、
不慮の事態が重なり合ったことによる、乳幼児の窒息事故と言う見解で、
病院側の意見が決着をしました。


 捜査本部でも、保育園側による過失の可能性については
有る程度まで言及はしたものの、それが致命的な死亡原因として
断定できるまでには至りません。
後になってから原因究明のために、急きょ参加した小児科医の意見も
取り入れて、突然死の可能性を考慮して、刑事事件としては取り扱わずに、
園長先生の事情聴取も終了しました。

 
 ほぼ3日間にわたった調書作成のために
園長先生が、すっかり疲れきってしまいます。
3日目の聴取が終わった直後、その足のまま園長先生が
美千子の自宅を訪ねました。