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鬼城 地球
鬼城 地球
novelistID. 15205
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Ambassador of chaos K  眠らされた剣

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「さっ、齊藤さん!?」
「おや、いつぞやのお二人さんじゃないですか」
「なんで、あんたがここにいるんだよ……」
「別にいたっていいでしょう?」
 
 あからさまに嫌な顔をしたKににやっと笑った齊藤……
 この二人は、いつぞやの事件からお互いの能力を認め合い、そして追う追われるといった関係である。

「しかし、あれですねえ……男二人旅とは、物寂しいですねえ」
「一人でいるお前に言われたくねえ」
「私は仕事です」
「俺たちも仕事だ」

 バチバチというような火花が見えそうな会話である。

「えーっと……あ、着いた」

 ただ、そのやりとりにおどおどするしかなかったSがエレベーターが展望台に着いたことにほっとした。

「おぉー、ここからの眺めもすげー」
「ふむ……なかなかの桜の咲きようですね」
「なんであんたが一緒にいるんだよ……」
「まぁ、ここであったのも何かのご縁ですし……情報交換しませんか? 木島さん?」
「今回は九条(くじょう)だ……おい、誠一! 売店の人にこれについて聞いてまわってくれ!」
「えー……今日ぐらい仕事忘れたっていいじゃん」
「誠一」
「あい……わかりました……」

 しゅんとしょげたようにKからあの暗号の紙を受け取り、齊藤とKから離れて行ったSだった。

「紙を鈴木さんに持たせていましたね、お尋ね者みたいなお仕事ですか?」
「いや、探し物だ……あんたは? 警察関係の人間が一緒にいないところ、まさかプライベートか?」
「ええ、そうですね……そうなります」

 先ほどとは打って変わって、斉藤は遠い目をして京都の街並みを見下ろしていた。

「九条さん、【天上会】って知っていますか?」
「なんだ、そのものすごく独立国家でも築きそうなものは……」
「ふふっ、確かに思想的には右ですね……京都に存在する宗教団体です」
「その宗教団体が気になるのか?」
「ええ、最近活動が跳ね上がるように出てきましたのでね」
「警察からの依頼じゃないのか?」
「ほとんど独断です、これに関しては……」

 齊藤の景色を見る目が細くなるのをKは見逃していなかった。

「あんたがそういう顔するのを見るのは初めてだ、真実の光といえどプライベートは弱いんだな」
「光だって、全て照らせるほどの力なんてありません。 持っている力が発揮するのは、自分の前にある暗闇だけです」
「クククッ……無理に照らそうと足元すくわれるぜ?」
「ふふふ……知っています」

 いつもの笑い方を返した二人、交わす会話が終わるとお互いに違う方向へ歩き出した。
一見情報交換をしていないと思われる会話だったが齊藤はKに忠告しており、またKは今回の依頼で齊藤が関わりあうことはないということを確認することができただけで大きな収穫ではあった。

 斉藤が関わるか関わらないかでKの仕事の進行度にかなりの影響があるからである。

 あくまでKは犯罪者。斉藤はそれを捕まえる警察の裏庭番。
お互いにとって仕事の邪魔は勝負ということを意味する。
 
 さらに今回の依頼は、何も情報の得ない相手からの依頼であるため慎重にならなければならない……
それだけでもストレスであるKにとっては、齊藤という壁はあまりに重荷である。
 
 今回は、救われたと思ったKだった。