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カミサマカクシ

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 先程のことを思い返した。

(あのひととは、おしりあいですか)
(あのひとは、おげんきにしていますか)
(あのひとはいま、おしあわせですか)

 どことなく義母に良く似た面差しの、古そうな着物を着た子供が自分に尋ねてきたいくつかのこと。

(むかしは、よくあそんでくださったのだけれど)
(さいきんは、かまってくださることがおできならなくなったみたいだから――)

 そう言って浮かべた悲しげな微笑は、あどけない子供の顔には全く似合っていなかった。

「ねえ、君たち」

 少女は森の中心でそっと上を見上げて呟いた。

「寂しいのう」

 もう、兄は【そういうもの】が見えないことは知っている。以前ためしに引き合わせたが、彼には何も見えなかったのだ。

「寂しいな、忘れられるのは」
(ちゃんと、ここにいるのに)

 だが、その昔の昔には、彼も見えていたのだろう。あの子供達と一緒に、遊び回っては笑いあった時期があったのだろう。

 ――応。

 森が少女の声に答えるかのように、ざわりとその身を震わせる。

 ――ただ、自分を思い出して欲しかっただけなのに。
作品名:カミサマカクシ 作家名:狂言巡