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黒猫ぺろり
黒猫ぺろり
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不条理劇場 第一部 はじまりの風景

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ある土曜日の夕方、オレは何もせず、ただボーっとしながら、ウトウトしていた。
その時だった、窓の外が妙に騒がしい事に気づいた。
何事かと、窓を開けてみた。そこには警官隊と母親の姿があっ た。
サングラスをかけた刑事とおぼしき角刈りの男が
自分の部屋がある二階を睨んでいた。

刑事は拡声器でオレに向ってこう言っ た、
「犯人に告ぐ、自分は西武(にしたけ)署の大門(おおかど)だ。
貴様の周りは我々に よって完全に包囲されている。
無駄な抵抗はやめて、大人しく出て来い」
意味が分からない。何故、自分がこんな事に巻き込まれているのか全く分からない。

そんな事を考えている時だった。刑事達の会話が聞こえてきた。
なにやら喧嘩をしているようだ。「ちょっとぉ、大門さん聞いてますか、
奴の母親を呼びますかって、聞いてるんですけど、何でシカトしてんすか」
「おい坂田、大門さんは団長って呼ばないと返事しねぇんだよ、覚えろよ」

「山田さん、それは知ってますけど、団長って呼ぶ意味が分からないですよぉ、
刑事ドラマじゃないんすよ」「坂田、大人になれ、大人には大人のルールがあるんだ。
それに俺は山田さんじゃない」 「あ?改名したんすか?」
「貴様、ふざけやがって、俺の事はヤマさんと呼べと言ったろ」

「だから、刑事ドラマじゃないんですよ、我々は公務員です。
ヤマさんとかゴリさんとかそんなのは、もう、うんざりだ、
大体、僕は何で坂田なんですか、僕の名前は松田です」
「だって、アホの坂田みたいなんだもん」
「もう、いいですその話は後で決着をつけましょう。団長ぉぉ」

「どうした、坂田」「団長、さっきから 僕が呼んでるのにシカトしてましたよね」
「何で俺が、鹿としなくちゃいけないんだよぉ、俺が鹿と何をしたんだよ、
あぁ、吐けこの野郎。そんな事言ってないで、さっさとあの馬鹿野郎の
親を連れて来い」「団長、さっきからそこに、いますけど」

「何だって?どこにいるんだ」「団長の後ろです」
団長と呼ばれた角刈りが後ろを向いた。
「ぐわぁ、背後霊・・・あ、違う。おお、これは不条さんのお母さんじゃないですか」
「息子がご迷惑をおかけしております。本当に申し訳ございません」
角刈りは母に拡声器を手渡した。

「さぁ、お母さん、息子さんを説得して 下さい」
「理(おさむ)の母親のメンツにかけて息子を外に出して見せます」
「お母さんお願いします」一体何が起きているんだ。
分からない、まだ状況が飲み 込めない。そうこうしている内に、
母が拡声器を片手にオレを説得しようとしていた。

「理ちゃん、今日の晩ご飯はカレーよ。 理ちゃん、辛いカレーは苦手だから、
甘口のカレーを作ったわ。林檎と蜂蜜と砂糖、しかも黒砂糖を入れたわ」
「おい、理ちゃん。聞いたか、今日はカレーだ。 しかも甘口だって言ってるぞ、
でもな、世の中はカレーみたいに甘くねぇんだぞぉぅ」

その時だった、通りがかりの男がいきなり叫んだ。
「おい、不条~ぉ、俺だよ俺」角刈りが男に怒鳴った
「おい、貴様は誰だ、オレオレ詐欺の人か?」
「へ?いや、僕は不条君の中学の同級生の村上ですけど」
「俺は、お前なんか知らん」「いや、あなたとは初めてお会いしますけど」

「そんな事は分かっている、国家権力をなめんな、
さぁ、不条君をこれで説得してくれ」角刈りは村上に拡声器を渡した。
「何か雰囲気出るなぁ~っ。一度やってみたかったんですよ。よし、いきますよ」
「頼んだぞ」「お~い、不条。俺だよ俺、俺だよ。村上だよ、久しぶりだなぁ」

なんだか村上は嬉しそうだった。よく分 からないが、とりあえず、手を振ってみた。
「おお、不条、元気そうだな。あのさ、今だから言えるんだけど、中3の頃、
お前の靴が無くなったって事件があっ たよな。靴隠したの俺なんだよ、
ゴメンなぁ。それと、中学校の修学旅行の時・・・」

角刈りが村上から拡声器を奪い取った。 「もう、帰れ。お前は何がしたいんだ」
「へ?これ、カミングアウト大会じゃないんですか?」
ヤマさんという犬みたいなおっさんが言った
「俺からもお願いす る。もう帰れ」続いて猿顔の坂田が言った
「私からもお願いする。お金貸して下さい」

キジみたいに顔を真っ赤にした村上が言った「は?何すか。これは何すか?
ていうか、金は貸せないですよ。アンタら何なんだよ」角刈りが言った
「だから、国家権力だよ」「は?訳わかんねぇよ。帰れば良いんでしょ帰れば、
何が国家権力だよ馬鹿野郎」と言いながら村上は帰った。

村上が帰ってから、しばらくの時間が経った。角刈りは犬顔ヤマさんに聞いた
「おい、ヤマさん。今何時だ」「8時です」「そうか、全員集合だな」
「どういう意味ですか?」「その名の通りだよ、突撃だ、家の前に全員集合だ」
「おい坂田、全員を家の前に集合させろ。頼んだぞ」

ヤマさんに命令された坂田は、返事もせずに黙って立ち去った。
そして、角刈りは言った「ヤマさん、気にするな。
坂田はお前の事が嫌いなんだよ。犬猿の仲って言うだろ」
「そう、なんです か・・・」「ヤマさんがなぁ、坂田にみんなの名前を
あだ名で呼ばせるのを強要するからだぞ」

犬顔は角刈りの言葉にムッとしていた。
ブルドックの様な顔だった。「それを言ったら、大門さんもそうじゃないですか。
団長って言わないと返事しないし・・・。あんたは、大門(だいもん)じゃないんだよ、
大門(おおかど)だろうがよ」角刈りは、ブルドックを睨みつけていた。

角刈りは震えていた。電気マッサージ器の様に小刻みに震えていた。
そして角刈りはブルドックを全力で殴った。
「逆ギレかよ・・・この野郎、俺は書道初段だぞ、かかってこい」
角刈りはブルに長渕 キックをかました。
ブルは、角刈りがよろけている隙にオレの家に逃げ込もうとした。

しかし、角刈りは容赦なくブルドッグを 追いかけた。
ブルドッグは焦りながらもドアを開け、中に入った。もちろん角刈りも入った。
それを見ていた猿顔は集めていた警官隊に叫んだ
「何かよく分かん ないけど、全員突撃だ!!」
階下が急に騒がしくなった。しかも、かなり揺れていた。

階下で「おい、突撃してくるんじゃな い!!」という角刈りの悲痛な叫び声の後、
断末魔の叫びが聞こえた。どうやら角刈りとブルは警官隊のタックルを
まともに喰らったようである。警官隊の足音 がオレの部屋に
どんどん近づいてきた。オレが一体、何をした。その時、ドアが開いた。

ドアの外には、ニヤリと笑う猿顔がいた。
オレは猿顔に手錠をかけられ、外に連れ出された。
一体何がなんだか分からない。
一つだけ分かったのは逮捕されたのだという事だけだった。
外に出ると、心配そうに息子を見る母の姿があった。
オレは言った「おい、オレが何をしたんだよ」

猿顔は間髪入れずに言った「それは、こっちが聞きたいよ。何をしたんだ」
「何って、家でボーっとしてたんだよ」
「そうかそうか、そうやって白を切ってると良い」
その時、母がオレに言った
「理ちゃん、出てきたのね。お母さん心配したのよ。おかげで500gくらい痩せたわ」