不妊であること
彼女は夫に電話をかけるため、携帯電話を取り出す。ストラップについている鈴がチリンと澄んだ音をたてた。
しばしストラップを見つめる。
それは彼女が妹からもらったものだった。
コウノトリに運ばれる子猫をかたどったマスコットは、巷では子宝のお守りとして人気があるらしい。
妹は現在2人目の子供を妊娠中。彼女は何の苦労もなく妊娠できる妹のことをうらやましく思い、同時に自分の体質を呪ったものだ。排卵誘発剤を飲んでも排卵する気配のないその体質を。
しかし彼女は、妹を恨むことはできなかった。もちろんこのストラップをくれたことも理由の1つだが、妹はブログにこう書いていたことがあるからだ。
「どうしてお姉ちゃんにできなくて、私に――」
この言葉で彼女は知った。
妹は私の苦労を分かってくれているんだ、と。
だからこそ、彼女は今でも妹と仲がいい。
妹の1人目の息子にも何の気苦労も感じずに接することができるし、2人目の子供の誕生も心待ちにすることができるのだ。