ロザリオの秘密
「昔、戦国時代にここは、当時の大名だった大友宗麟が治めていたんだって」
志郎が物知り顔でそう言った。
「うん、私もおばあちゃんから聞いて知ってるわ」
そう言うと蘭子はにっこり笑って言葉をつないだ。
「私の先祖はその昔、九州に住んでたそうなの。で、このロザリオはキリシタンだった先祖の物で、私のうちに代々伝わってる物なの。詳しいことは知らないけど、このロザリオには何か秘密があるらしいのよ」
「へぇ、秘密かぁ。どんな秘密なんだろうな」
「昔ね、この辺りではキリシタンだっていうだけでかなり迫害を受けたらしくって、そのせいで死に追いやられた人も沢山いたんだって。今の時代では考えられないことだけど……。私の先祖もその時の迫害で亡くなったそうなの。でも死ぬ前にこのロザリオを特注で作って残したんだって」
「ふぅーん、特注かぁ……。でも、それならどうして俺のと同じなんだろう」
「そこなんだけどねっ、もしかしたら私の先祖と志郎くんの先祖とが恋仲だったりして! ふふっ」
「そうか! だから俺達はここで巡り会った。うん、そうかもなっ」
「そして今、こうして二人でここに旅行に来てる。ハネムーンとしてね!」
「あははは。ということは、俺達は先祖から導かれて一緒になったのかな?」
「えぇ、きっとそうよ! そう考えるととてもロマンチック。そうじゃない?」
「うん、確かに!」
「ここは、宗麟の影響でSORIN号(そうりんごう)というバスも走ってるし、大分市教育委員会の生涯学習課ではソーリンくんの部屋っていうHPを作っていて、市民がそれを活用して未来に向かって学べるようにもしているみたいなの。ソーリンくんのキャラクターも可愛いのよ」
「へぇー、いやに詳しいんだなぁ」
「だって、私たちを結び付けてくれた場所だもん。それくらい知ってなくっちゃ。これから私たちも、未来に向かって二人で成長していけるといいね」
「そうだな。まずは俺達の子孫を繁栄させなくっちゃ! だから今夜は……」
「もう、志郎くんったら……」
少し頬を赤らめた蘭子の肩を抱き、志郎はすかさず彼女の唇に自分の唇を重ねた。
「これからもずっと仲良くしていような。先祖の分も」
「うん!」
きっと先祖の霊が見守ってくれる。そう信じる志郎と蘭子だった。
了
※ 本来ロザリオは、キリスト教信者にとっては礼拝の時の道具であり、首にかけて使用するものではありませんが、ここでは一般的に使用されている首飾りとして登場させています。ご了承下さいませ。