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ゴウヤクと愉快な仲間達 -炎灼主-

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 58代目の夫…熬籥(ゴウヤク)には本当に感謝しているし愛している。
 その愛も家族愛的なものなのだが。



「…というのが大雑把な私と熬籥の関係ね」
 炎のような色の髪に瞳でどこからどう見ても『炎の部族』の女性の姿をとっている炎灼主(エンシャクシュ)が本当に大雑把に話す。
 因みに炎灼主の肉体は無王(ムオウ)や熬籥(ゴウヤク)と違い人間のモノではなく、どちらかと言えば『四大街』の城壁に近いものだった。
 四大街にはそれぞれの力が凝縮、物理化された城壁がある。
 ちなみに、巨大な都市でありながら『街』なのは、この大陸全体を一つの国(国という概念ははっきりとはないのだが)もしくは人々の集まる『場』として考えてしまった場合大陸全体に対して本当に小さな場所でしかないということによるらしい。
 最近では『四大都市』とも呼ばれる。
「お前を『破壊者』の運命から開放したのが熬籥というわけか」
「どちらかと言えば、本当は運命から開放するための知識と方法を入手してくれたと言うのが良いのかしら??朧(ショウロウ)と?斗(ビョウト)にも頑張ってもらったし」
 ショウロウは熬籥の娘で59代目炎の乙女、ビョウトはその伴侶で『水の子』水の部族の青年。
「ビョウトの子供がこの世に誕生できたのは一概に私のお陰なのよ?」
 フフフと笑う。
「でも、ビョウトの子供だから産めたっていうのもあるね」
 炎の部族でも強力な力を持っていた?朧、対するビョウトも水の部族のものとして強力な力を持っていたと聞いている。
「お互いの力のバランスよかった。あと、力のコントロールも本能的に長けていたのよね。知っている?『水の乙女』って」
「…『炎の乙女』とは違うのか?」
 聞いたことはあるがどんなものかまでは知らない。
 知っていたかもしれないが忘れた。
「『水の乙女』は約100年に一人の割合で生まれるといわれる、水の精霊の女性型の外見を持った者のこと。水の精霊に最も愛されている者とも言われる。水の精霊もその本人も無条件にお互いを慕い合うのですって。100年に一人は大体でもっといることもあるしもっと少ないこともあるらしいけど」
「…ビョウトはソレだったってことか」
 たしか、熬籥に教えられた『炎の英雄』ショウロウの伴侶は水の街で見かける水の乙女の像(水の精霊の女性型を模っている)と同じような姿をしていた。
「ある意味バランス良いわよね。少年的なショウロウと、少女的なビョウト」
 確かに。
「あと、私が多少暴走してもビョウトの力はそれをとめることが出来るほどに強く大きかったのよ。私が出会った水の部族の者では一番二番を争う力だったわ。ある意味怖いくらいね」
 水の乙女というと平素穏やかな印象がある。
 水の精霊の場合激しさは『男性型』が司る。
「でもね。私の本来の破壊力は理性的に私の力を封じ込めることに成功したコウライやショウロウに憑いていたときとは比べ物にならないのよ、ってことで私が今まで破壊したもので一番大きなものをビョウトに教えたらさすがに驚いていたわ」
 そのときのことでも思い出したのだろう。
 クスクスと笑い出した。
 無王は大体を聞いているが、一番大きなモノはナンだったのか思いつかない。
「それはね…」
 無王も驚くと思っているのだろう。
 フフフと笑い続けて告げた。 

「『火の街』よ」

「……」
 確かにそれは大きい。
 ただ、どういうことなのか頭の中で思考をめぐらせる。
 以前確かに『炎の精霊王』は自らが火の街を破壊したと言っていた。
 炎灼主も同じものを破壊したという。
「私は一部を破壊しただけだけど。王の命により破壊できるって言うのは気持ちが良いものね。跡も残らないほど、いや何があったのかわからないほどに無にすることが出来たわ。気持ちが良かった」
 破壊者の本能だろうか。
「ただ、私が完全に壊すことが出来なかったのも『火の街』かな。だって大聖地の『核』は壊せなかったし。それを熬籥が発見してショウロウが『火の街』を『炎の街』として復活させた」
「破壊して、ある意味復活もさせたって事か?」
 『炎の英雄』ショウロウが59代目炎の乙女であったことを思えばそういうことになるだろう。
 しかし炎灼主は首を振った。
「私が憑く前にショウロウは既に『炎の街』の聖地たる力を復活させていたから、私は関係ないわね」
 熬籥の行動が一歩先を行っていたということだろうか。
 それにしても、熬籥曰く「少年というよりも子供」のころにショウロウにその行動を取らせていたらしい。
 それほどにショウロウの精神状態や発育が危うかったのかもしれないが(色々あったらしい)、それをさせてしまう親もそれを行ってしまう子供もスゴイ。
 どれくらいすごいのか言い表せないほどなので、「スゴイ」としか言い様がない。
「あ、でも私が今まで破壊したもの中で一番広い場所は『火の街』ではないとおもうのよね。今となってははっきりとどこかとは分からないのだけど、見える範囲を越えて全てを燃やした場所があったのよ。確か、火の街からいって地の街方面だったと思うのだけど…後から聞いたら数年はその地域で火がくすぶり続けていたらしいけど、『火の街』を壊すより以前だから跡も無くて…火の宮殿に行けば誰か知っているかも?」
「宮殿って、精霊界の王のいる?」
「そそ」
 簡単に言うが、通常炎に連なるものしか立ち入れない。
 もしくは王の許しがあって入れるとしても、無王の場合人間の肉体を捨てなければ行くことが出来ない。
 それだけを聞く為に行くような場所ではないのは明らかだ。
「まぁ、お前と火の街と熬籥の関係は大体分かった」
 本当に大体。
「熬籥は、義理の息子であり、恋人や夫であり、父であり、恩人でもあるし、信頼できる人物でもあるし…愛玩っぽい部分もあるかしら?」
「…羨ましいな」
 それだけ並べられるのも、本当に羨ましい。
 ただ、炎灼主には何故か嫉妬的感情はわかないのだ。
 炎灼主が熬籥に向ける愛情が親愛の情であることが分かっているからだろうか。
 たとえ伴侶だったことがあるにしても、だ。