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せき あゆみ
せき あゆみ
novelistID. 105
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ぼくんちはおばけやしき

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夏休みが始まってすぐ、ぼくの一家は新しい家にひっこした。街のはずれの庭つきの一軒家。白い壁とれんがの煙突のついた赤い屋根のかわいらしい……そう、月並みな言い方をすれば、『まるでおとぎ話に出てくるような家』に。
「まあ、夢みたい。パパ、ありがとう」
 ママは目をうるうるさせている。もろに、ママ好みだもんね。
 ぼくはといえば、ちょっと、いや、かなり少女趣味なのがいまいちだけど、自分の部屋があるっていうのと、庭が広くてパパとキャッチボールしたり、サッカーのドリブルの練習ができるのがいいかな……。そうそう、それに、今までより学校が遠くなったけど、転校しなくてすんだのもなによりだ。
「さあ、中へ入ろう」
 パパがドアをあけようとノブに手をかけたとき、ぼくはドアに紙切れが張ってあるのに気づいた。
「パパ、見て。なにか張ってある」
「ほんとうだ。どれ」
と言って、紙切れを手に取ったパパはいきなり吹き出した。
「ぶはっ」
「なんだって?」
 のぞいてみたぼくもおかしくて笑っちゃった。

 ──おばけやしき──

 子どもの字でそうかいてある。
「へったくそな字」
「いやだわ。こんないたずら」
 ママは眉をひそめた。そりゃ、そうだよね。ママにしてみれば、あこがれの家そのものなんだもの。
「まあ、近くの子どものいたずらだろ。たしかに最初に見たときはお化け屋敷みたいに荒れていたからな」
 パパは豪快に笑って、紙きれをまるめてポケットにつっこむと、玄関へ入った。