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「レイコの青春」 25~27

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 埋め立て用の道路を整備するために、隣接する畑を借り、
そこへ国鉄の廃材となった枕木を大量に払い下げてもらいます。
準備委員たちが中心となってそれを畑へ敷き詰めました。
国鉄の線路工事の廃土をもらい、埋め立て工事がはじまりました。


 しかし結局、廃土だけでは足らず、地元業者と契約して、
残りの埋め立て部分を完了させました。
この埋め立て工事には、306.500円かかりましたが、
労務提供をしてくれた多くの父母の協力がなければ、
これの以上の経費、おそらく3倍以上はかかったと見積もられます。


 こうして購入した土地の埋め立て工事が完了した頃に、
なでしこには、幸運な知らせが舞いこみました。
申請をした『保育所設置に関する事前協議書』に対して、
県衛生民生部長名による正式な回答が到着しました。



 それには、


「地域的に見ても、なでしこ保育園を設置することが
必要と認められるので、これを承認する。」


とあり、 さらにすみやかに、

「保育園の建設主体である社会福祉法人を設立して、その認可を得ること」、 
「提出された園舎建築図によると、乳児のほふく室が規定よりも
1.65平方メートル不足しているから、改善すること」

 などが、条件として附記されていました。
しかし法人つくりも、簡単なことではありません。



 理事の人数が多すぎる。
理事と監事の人事の中に、親族のものがいる。
理事会の中に園長以外の職員がいるのは、理事会と労働組合の権限を
侵害することになり、運営上不都合が生じるなどの指導もはいりました。


 さらには、法人運営のための定款を作る必要がありました。
保育園運営のための職員の獲得と名簿の提出、
保育園運営のためのオルガンや机、すべり台・ブランコ・ストーブ
・鉄棒・放送設備・黒板・食器戸棚・下駄箱等など、
実に36項目にわたる備品類を完備することと、
その目録の提出などが求められました。


 目録に書かれた備品のほとんどは、当時、移転工事をしていた
商業高校と労使会館からの寄付によるものでほとんどをまかないました。
柵・ブランコ・すべ り台などは、園児の保護者でもある鉄鋼所が、
格安で作ってくれました。
97頁にもわたる申請書や定款の印刷についても、
地元商業高校の女子タイプライター部員たちが応援に駆け付けてくれて
無料でタイプをして、さらに印刷までもこなしてくれました。


 
 建設用地も決まり、県からの承認で力を得たことで、
なでしこ保育園の建設は、一気に実現に向けて元気に走りだしました。
しかしいくつもの問題を、粘り強く一つ一つ乗り越えてきた建設委員会が
こののちに、予期しない事故をきっかけに、
重大な危機に直面をします。

 それは、二人の子供を預けて
いつものようにキャバレーの仕事に出かけた美千子のもとに、
夜の10時を過ぎてから、動揺気味のマネージャーが
「至急の電話です・・」と告げた瞬間から、始まりました。