「レイコの青春」 25～27
その数字を目の当たりにしたときに、
同席していた全員からは、思わず絶望と落胆に近い声が漏れました。
国や地方自治体からの援助や補助は、施設がすべて完成をし、
検査に合格をしてから、初めて有効になるからです。
予想はしていたものの、実際の金額を前にして、
重い空気になりかけていたときに、
一同の中でその活路を開いたのは陽子でした。
「市内に有るすべての労働組合の青年婦人部へ、
協力をお願いして歩いて、
建設のためのカンパをもらって回りましょう。
働くお母さんたちの権利を守るためにも、
ゼロ歳児から見てくれるという認可保育園が、絶対に必要になります。
働いているほとんどの女性たちにとって、避けては通れない道です。
その人たちに向かって、わたしたちの夢を訴えましょう。
そこでお金を集めることも大切ですが、それ以上に、
ゼロ歳児や乳幼児保育の必要性がアピールできる
絶好のチャンスにもなります。
お金集めも大切ですが、ゼロ歳児の認可保育園を作ろうと言う
世論を作り出していくことも、同時に大切です。
オルグ隊を組織して、行動して回るだけでも価値があると思います。
どうでしょう。」
「陽子さんて、もしかして、もと元全学連かしら？
でも、それは確かに良い考えだと思います。
個人的に、協力会員や出資者を募るという方法なども併用しながら
市内の青年婦人部をオルグして回るということは、
これからの世論作りの上でも、大きな効果が期待できると思います。
やろうよ、みんな。」
※「オルグ」とは。
学生運動のメンバー達がよく使っていた言葉で、
組合や組織へ人を勧誘することを意味しています。
あるいは「説得する」という意味もあります。
もともとは、ロシア語の「組織する」から来ている言葉です。※
美千子が真っ先に賛成の手を上げました。
しかし桐生市は人口が１２万人そこそこです。
もともとが商都として発展をしました。
しかも、市街地の中心部が、極狭の盆地地形と言う制約があります。
そのために県下でも、大きな企業の誘致が他の市町村と比べて、
つねに大幅に立ち遅れてきました。
陽子が発案をした、労働組合の実態もこの時点では、
まったく把握ができていません。
思い当たる企業を手始めに、「ローラ作戦」が提案され、
アポなしで、飛び込みというオルグ活動が展開されることになりました。
身重で出産が間近の靖子がけが、メンバーから外れることになりました。
残った美千子とレイコ、幸子の３人がオルグ隊に選ばれます。
再び、陽子が猛烈と怒りはじまます・・・・
作品名：「レイコの青春」 25～27 作家名：落合順平