ギャンブラー物語
1時間したくらいだろうか、優作がモモの所へやってきた。
モモは意外とレートが高いルーレット盤に座っていた。
「サンキュー、モモのおかげで勝たせてもらった。ほらっ」
優作はゴールドのチップを見せながらニコニコしていた。
「もう、ばかっ。恥ずかしかったんだからね」
モモはルーレットの玉の回転を見ながら優作に言った。
「どうだ、おまえは勝ってるのか?」
「なんだかボチボチだわ。いくら勝ったの?」
「300万くらいかな」
「ええっ~~凄いじゃない。まだするつもり?」
「いや、もうやめる。なんだか俺の勘がそう言ってる」
「あら、1000万までがんばるんじゃなかった?」
「ギャンブルはそう、うまくいかないさ」
「へぇ~~」
カラカラッと音がしてルーレットの玉が止まった。
モモの賭けてる場所を全部はずした所に玉は止まった。
残りのモモのチップは500ドルくらいが目の前にあった。
「なんだ負けてるのか。そろそろ切り上げるか」
モモは自分のバッグの中を開いてチップの計算をしてみた。
目の前も含めて1000ドルのチップがあった。
トータル5万円の勝ちか・・目標には及ばなかったな・・・
「ねぇ~、優作。優作の毛をくれない?」
「はぁ~、俺の毛って、下の毛か・・?」
「うん、私もゲン担ぎ。いいでしょ?」
「全部、黒に賭けるわ。有り金全部1000ドル」
「おまえもギャンブラーだな。しかし、ほら3回黒が続いてる。赤が出る確率が高い。分が悪いんじゃないか?」
「いいの。ほらルーレットが廻りだしたわ。早く抜いて!」
「「エッ、今すぐかよ」
「もう賭けたのよ。早くっ!」
優作は急いで自分のパンツの中に手を入れると、勢いよく引き抜いた。
痛ッ・・・。
そして、モモが賭けた黒のチップの上に自分の陰毛とともに5枚の100ドルチップをすばやく置いた。
「Don’t bet」
ディーラーのストップの声がかかる。カラカラカラ・・・
乾いた玉の音が響き、ルーレットの玉が不規則に飛び跳ねた。
カラカラカラ・・・・カツン・・
黒だっ!!
モモは小躍りした。体全身で喜びを表し、どうだと言わんばかりに優作の顔を見た。
「きゃ~っ、やった~・・・」
優作もまさか当るとは思わなかった。モモにつられて喜んだ。
2倍の2千ドルのチップがモモの元に返ってきた。優作には1000ドルのチップが。
「あら、あなたも賭けたの?」
「ああ、これでおまえの目標20万円近くは行ったろう」
「貰っていいの?きゃ~、うれしぃ」
「今のはおまえの勝負だからな」
優作とモモは100ドルチップをディーラーに投げやると、二人してサンキューと言った。
「よし、帰ってシャンパンだ」
チップを現金に換え、お世話になったカジノを出た。
乾いた砂漠の風が熱いけど気持ちよかった。
まだ日が沈むには時間がある。結婚式も明日だ。
優作はモモに「せっかくだから、明日の予行練習をしよう」と言って、
二人でホテルに帰り、優作は真新しいスーツを、モモは派手なドレスを着て
シャンパンを飲みに出ることにした。
「なんだか、気持ちいいなぁ~」優作が言うと
「私も、凄く楽しい」と言ってモモは優作に抱きついてきた。
「おい、おい、カラオケおばちゃんがラスベガスで乱痴気か?」
「いいの、いいの、今日はお祝い」
二人はホテルの高層階にある、豪華なバーに入っていった。
そしてシャンパンを頼んだ。
細長く、薄いガラスのシャンパングラスは上品だった。
優作は「乾杯する前に、これ返しとくわ」と言って、
モモのカールした陰毛をテーブルの前に差し出した。
「きゃっ・・」それはモモにとって見覚えのある自分の毛だった。
「恥ずかしい・・」そう言うと、自分の毛を取りドレスの胸元の谷間に落としこんだ。
「後で、また、それ、貰ってもいいかい?」優作
「・・・いいわよ・・」
砂漠の向こう側に日が沈もうとしていた。
二人にとって幸せなサンセットドリンクとなった。
(完)