総会
「皆様もご承知のように、会長職は誰にでも出来るものではありません」
〈脳〉の答弁が始まると、すかさずヤジがとんだ。
「やってみなくちゃ分からないじゃないか」
「そうだ! そうだ!」
〈脳〉は、今までの総会とは違う雰囲気になっているのを感じた。ここは、簡潔に行こうという結論に達し、「それでは、民主的にまず次期会長を誰にするかを投票で決定したいと思います。それでよろしいでしょうか?」と続けた。
「そうだ! そうだ!」という声がして、〈脳〉は、あれっと思った。どちらにも「そうだ! そうだ!」と声を上げているのは……と、声の主を見ると【手足部】の〈膝〉だった。こいつも疲れているなあと〈脳〉は苦笑する。
「それでは、これから投票用紙を配りますので、あ〈手〉君、これを全員に配って。え~、書き終えた投票用紙は投票箱に、え? そんなもの無い? じゃあ〈足〉さん、書き終えた順に集めてもらえますか?」
〈脳〉は、皆が投票用紙に書き込んでいるいる間落ち着いて考えてみると、一気に不満が爆発してきたこの会を纏め引っ張ってゆく情熱が次第になくなってくるのを感じた。
【ありゃりゃ会】初めての記名投票の結果は、混沌そのものだった。
複数得票を得たのは、〈脳〉と〈心臓〉が4票、2票の四人の中に、何故が〈ヘソ〉が入っている。過半数はとおに及ばず、仕方なく〈脳〉と〈心臓〉による決戦投票になるわけだが、さらにやる気を無くしてしまった〈脳〉は、それを放棄した。
「それでは、次期会長は〈心臓〉さんにやって頂くことになります。皆さん、よろしいでしょうか?」
心臓はやる気満々で皆を見回してみたが、皆不満そうに近くにいる互いの顔色を伺う。
ここで、みかねたこの会の顧問である〈骨〉じいさんが、口を開いた。
「最高得票が4票では皆納得すまい、この際、持ち回りということでどうじゃろ。順番はクジで決める。任期は1ヶ月。2年間これで行こう。1ヶ月、これなら初心者でも何とかなるんでないか、分からないことは〈脳〉に聞く。もう疲れたからこれで決まり!」
「そうだ! そうだ!」と、〈膝〉が言って、その他のものも成り行き任せ、くじ引きが始まった。