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総会

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〈脳〉は、ちらっと昔を思い出した。皆忠実な部下たちであった。皆、慕って黙々と業務をこなしてきていたあの頃。さすがに、80年ともなると、あちこちに不満が噴出してきてもおかしくない。〈目〉からの不満を、経年変化だと無視してきたのは、まちがいではないと思っている。〈口〉も〈耳〉課も問題は無い。問題は【内蔵部】の【上半身課】だ。これらの業務低下あるいは業績不振は自分の責任が無いとは言えない。やはり不満が貯まっていると思わなくてはいけないだろう。

〈心臓〉が、挙手をして「会長! 要するに会長職を辞任するということですか?」と訊いてきた。
〈脳〉は、皆が会長職を続けて欲しいと望めばそうする予定だった。しかし、どうやら【内蔵部上半身課】の総意は私の想像通り辞職を望んでいるなとの感触を感じた。
「長年議題にものぼらず、当然のように会長職を続けて参りましたが、この職務は誰にでも出来る性質のものではございません」
〈脳〉がそこまで言った時、普段発言することの無い【内蔵部下半身課】の〈肝臓〉が、手を挙げた。司会兼会長の〈脳〉は、意外そうな顔で肝臓に発言を促すように微笑みを向けた。

「会長の話は長い。短く結論だけを言って欲しい。この【ありゃりゃ会】は、今まで長い長い間、会長や〈口〉、その他の快楽主義者がアルコールの過剰摂取を続けてきました。その後始末は私〈肝臓〉を筆頭に、【内蔵部下半身課】の皆様方に負担をかけてきましたことを考えると、ここで辞任をして欲しい」
怒りをにじませた〈肝臓〉の発言に、〈腎臓〉、〈膵臓〉が「そうだ、辞任だ」と声をあげる。

会長は【内蔵部上半身課】だけの不満と思っていたものが、【内蔵部下半身課】の総意も辞任だということを知って、少しうろたえてしまったけれど、闘争心に火がつき、この会には自分に代わる〈会長〉になるべき人材はいないと強気に思うのだった。(なんだ、まだ続けたかったのか)と、〈脳〉は自分の真意に苦笑しながら、〈肝臓〉に対し、答弁をした。

作品名:総会 作家名:伊達梁川