「レイコの青春」 22~24
「ひとりだけだが、君たちが必要とするだろうと思われる、
心強い女子職員が、その児童福祉課に居る。
ただし、うるさすぎるのが災いをして
今は、市内の公立保育園の事務に飛ばされている最中だと聞いている。
君たちと同じように、児童福祉課へ配備をされた時から
ゼロ歳児や乳幼児保育の必要性を、課内で説いて回ったという
前代未聞の逸話の持ち主だ。
君たちよりは2歳年下のはずだが、
良き協力者になれるというか、波長が合っているように見える。
ただし、市の職員というものは、
そういう政治的色彩の強い活動に参加するということになると、
なにかと庁内のお偉方には、
うとまれる結果にもなるのだが・・・」
「ゼロ歳児や、乳幼児の保育問題というのは、
そんなにも政治色が強いというわけ?」
「いや、それは・・・
社会福祉や教育の分野にかぎったことではないが
できれば市民たちのために、あまり金をかけたくないと考えている
上部や上司たちの言い草だ。
実際、僕のところでも共稼ぎでやってきたが
子育てのためにいまは、妻が休職中だ。
君たちの考え方にも、いちおうの支持はできる。」
「へぇ、ガリベン君って以外なことに社会派だったんだ。
子育てをする立場になって、さらに
保育の問題にも、目覚めはじめたというわけね。」
「まあ、一応そう言うことにしておいてくれ。
ただしこれは、ここだけの話にしておいてくれよ。
僕にも立場があるし、これ以上は表面にでるわけにはいかない。
そのかわり、その例の女子とは僕の方から連絡を取って、
後で必ず紹介をする。」
「ありがとう、やっぱりここを訪ねた甲斐が有ったわ。
それにしても、あんたもずいぶんと、
いろんな立場があって大変ねぇ、
それでさぁ、気を遣いすぎて疲れないの?」
「いろんな立場かぁ・・・
でもさあここは、そういう職場なんだぜ。
大変なんだよ、とかく下っ端の公務員というものは。」
作品名:「レイコの青春」 22~24 作家名:落合順平