二人の王女(2)
2
やがて物語は、丁重に装丁された厚い本の中で息吹を取り戻し、
再び誰かの手によって開けられるその日まで深い眠りにつく…
偶然という名の運命が、二人を結びつけるその日まで、
ただ物語はその主を、静かに待ち続ける
本棚という、果てを知らぬ時空の壁に身を寄せて…
夏の爽やかな香りを含んだ眩い陽光が、カーテンの隙間から木漏れいで、薄暗い空間を照らす。
高遠あすかは、周囲を見渡し誰もいないことを確認すると、するりと窓からその空間へと身を滑らせた。
もう長い間誰も立ち入ってなかったらしいことを示す埃っぽさと、図書室独特の本の匂いが鼻をつき、どこか心が踊るような胸の高鳴りを覚えていた。
―――ついに入ってしまった…
あすかは、その嬉しさと達成感に、思わず満面の笑みを浮かべた。
あすかの通うこの私立の中学は、生徒たちの学び舎となる新校舎とは別に、今は使われていない旧校舎が存在していた。新校舎建設時に旧校舎は取り壊されるはずだったのだが、不測の事態があったとかなかったとかで、現在も取り壊されぬまま立ち入り禁止という形で残されたままになっていた。
真っ白な壁に囲まれた新校舎とは違い、旧校舎は年季を感じさせる木造立てだった。しかし、階段や扉一つとってみても、凝った彫刻がなされていたりとアンティーク特有の重厚さを感じさせ、あすかはその佇まいがとても気に入っていた。
しかし、あすかがこの旧校舎に興味を持った一番の理由は、別のところにあった。毎日放課後に図書室へ通うほど、あすかは本が好きだったのだが、あるとき司書の先生に旧校舎の一階にある図書室には古い書物が多く残されたままになっているという話を耳にしたのだ。それらは現在は絶版になっているものも多く、歴史的価値の高いものも多いのだという話を聞き、それをぜひこの目で見たいと思うようになったのだ。
やがて物語は、丁重に装丁された厚い本の中で息吹を取り戻し、
再び誰かの手によって開けられるその日まで深い眠りにつく…
偶然という名の運命が、二人を結びつけるその日まで、
ただ物語はその主を、静かに待ち続ける
本棚という、果てを知らぬ時空の壁に身を寄せて…
夏の爽やかな香りを含んだ眩い陽光が、カーテンの隙間から木漏れいで、薄暗い空間を照らす。
高遠あすかは、周囲を見渡し誰もいないことを確認すると、するりと窓からその空間へと身を滑らせた。
もう長い間誰も立ち入ってなかったらしいことを示す埃っぽさと、図書室独特の本の匂いが鼻をつき、どこか心が踊るような胸の高鳴りを覚えていた。
―――ついに入ってしまった…
あすかは、その嬉しさと達成感に、思わず満面の笑みを浮かべた。
あすかの通うこの私立の中学は、生徒たちの学び舎となる新校舎とは別に、今は使われていない旧校舎が存在していた。新校舎建設時に旧校舎は取り壊されるはずだったのだが、不測の事態があったとかなかったとかで、現在も取り壊されぬまま立ち入り禁止という形で残されたままになっていた。
真っ白な壁に囲まれた新校舎とは違い、旧校舎は年季を感じさせる木造立てだった。しかし、階段や扉一つとってみても、凝った彫刻がなされていたりとアンティーク特有の重厚さを感じさせ、あすかはその佇まいがとても気に入っていた。
しかし、あすかがこの旧校舎に興味を持った一番の理由は、別のところにあった。毎日放課後に図書室へ通うほど、あすかは本が好きだったのだが、あるとき司書の先生に旧校舎の一階にある図書室には古い書物が多く残されたままになっているという話を耳にしたのだ。それらは現在は絶版になっているものも多く、歴史的価値の高いものも多いのだという話を聞き、それをぜひこの目で見たいと思うようになったのだ。