「レイコの青春」 19~21
そのきっかけとなったのが、
病院で看護婦として勤めているレイコの同級生、
近藤靖子の双子の出産でした。
病院では「子供ができたら退職をする」と言う、不文律があります。
働き続けるために、病院内での共同保育所の開設運動も
始まっていましたが、とても双子の出産までには
間に合いそうもありません。
子宝には恵まれたものの、国鉄勤務の旦那さんと共に、
靖子さんはその進退に極まっていました。
「どのようにして双子を育てればよいのか、
勤めをやめるべきか、続けるべきか」と、近藤夫妻は悩みます。
「この子たちのためにも勤めは続けよう。
子どもを立派に育てながら、勤めも立派にやっていける方法はないのか」
と、仕事と保育の両立する道を模索しはじめました。
しかし市内に有るどの保育園に問い合わせても、
乳幼児やゼロ歳児を預かってくれるところはありません。
この時点で、家族が増えるという喜びとは裏腹に、近藤家は
一瞬にして保育難民になってしまいました。
困り果てた靖子が、大きなおなかを抱えて最後にたどりついたのが
古民家で再スタートをしたばかりの、無認可の「なでしこ保育園」です。
にこやかに出迎えたのは、同級生の美千子でした。
(22)へつづく
作品名:「レイコの青春」 19~21 作家名:落合順平