なんでも治す薬 四、
四、
かなちゃんがテレビを見ていると、突然、階段を下りてくる足音が聞こえてきました。軽い小さな音から、お母ちゃんのものだと分かったのですが、なぜかそれは、少し、急ぎ足でした。
(どうせ、早う寝えやいうて、言いに来たんやろ)
そう思っていましたが、違いました。
台所の戸を開けたかなちゃんは、黒い服を着ていました。そして、深刻そうな顔つきでこちらに向かってくると、かなちゃんの肩に手を置き、こう話したのです。
「かな、お母ちゃんな、知り合いの人が急に亡くなってもうたさかい、そっちに行かなあかんようなってん。帰ってくるんは、明日になる思うわ。
早う帰ってこれるようにするさかい、その間、お父ちゃんと一緒に、留守番しといてくれる? 」
「うん」
かなちゃんはうなずきました。もっとも、心の中では、
(しめしめ、これでうるそうに言われんですむわ。早う帰ってきませんように)
などと、思っていたのですが。
作品名:なんでも治す薬 四、 作家名:LUNA