colore×colore×colore
きんいろ
きらきらとしたものは いつも高いところにあって
よどんだ血餅の隙間から
そのいろを あふれるように 漏らしている
きらきらとしたものを いつも羨ましく見ていた
黒ずんだ汚れたものは 上のほうにとどまって
そのいろを 後光のごとく 背負っている
目標がないと生きていけない
誰かからもらった言葉は たしかに確かなのに
きらきらとしたものは はじめはきらきらしていなかった
幼いころは よどんだものなんて見えていなくて
まるで目の前にあるもののようにしか見えていなくて
それなのにそのすがたさえも見えていなくて
喩える言葉を知らなかった 目標という言葉を知りはじめていたころ
社会は人をおとなにする
真実も現実も嘘も欺瞞も たしかにひとをおとなにするけど
きらきらとしたものは いくつもの光を放はじめる
そしてこころを揺るがしていく
熱いこころを時に冷ましていくように
ちらばる目標はそのひとつでさえ自分だけのものじゃない
天使のはしごを昇って 掴むことが 生きること
きんいろの光を追い求めて手に入れて また求めることが
生きること
きらきらとした光を
ひとつに絞って目指していた はずだった
それなのに届かなかった
きんいろの光はまだこのこころに差し込んではいるけれど
また昇りはじめることはできるんだろうけど
余所見をしたから 不可なかったの
このこころは隣のはしごを眺めていた
乗り換えるつもりもなかったくせに
それが不可なかったの
どうしても
これだけは手放せなかった
このはしごを昇りきれなかったことはとても悔しくて悲しいけど
熱いこころが地平線にもたれかかるときにいつでも
沈むにしろ昇るにしろひときわ輝くようなきんいろを
どんなにさむくて苦しくても
このこころは目標にはならないこれだけを
忘れることはできなかったんだ
作品名:colore×colore×colore 作家名:すばる