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真夜中の公園で

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 猫を飼いたいと、河田靖樹は思っている。当然、猫が好きだからだが、その理由は本人にもよく解らない。
 彼は犬を見ても可愛いとは思わない。非常に多くの人が犬を飼い、一緒に散歩している姿を見ない日はない。間違っていることには違いないのだが、それを、河田は不快に感じている。
 清潔な猫には匂いがない。犬には独特の生臭さがある。この点が大きな違いである。
 河田にとって最も犬の嫌いなところは、人に向かって吠えることだ。そのヒステリックな悪声が、執拗に発せられるという点だ。ひどく耳障りな声で、犬たちは吠えだしたら止まらない。
 吠えることと並んで犬には不快なところがある。あの長い舌を震わせて四六時中、はあはあ息をしている。実にせわしない。しかもやたらと小刻みに動き回る。見ていて落ち着かないことこの上ない。
 そして圧巻は、人を追い駆けて襲うこと。噛み付いて時には人を絶命させる。そんなひどいことがなぜ途絶えないのだろうか。猫が人を噛み殺すことは決してないが、犬は人を咬み殺す。「猛犬に注意」という張り紙は時々見かけるが、「猛猫に注意」という表示は見たことがない。
河田はタクシーの乗務員であり、そのために公園との縁が深い。公園のトイレを利用するからである。
作品名:真夜中の公園で 作家名:マナーモード