爆々ねこレース
「さきほどの言葉、もう一度言ってもらえますか?」
さきほどの言葉って何だっけ?
「さっきの言葉ってなんスか?」
「ゴール前にわたしを抱きかかえる前に言った言葉です」
「……あっ」
わかったけど、あの時は勢いで言っちゃったし。こうやって改めて言うのはハズい。
俺のことを見つめる明日菜ちゃん。そんな目で見ないでくれ、沸騰しそうだ。
黙り込んでしまった俺のことを横にいた誰かが肘で突付く。
「光さま、早くお言葉を申し上げてください」
「げげっ、あやめさん!?」
私服に帽子を深く被ってたから気づかなかった。
うわっ、しかも、あやめさんの横にはローズマリーまでいるし!
あやめさんは胸元から手錠の鍵を取り出した。
「光さまが?明日菜さま?に気持ちを伝えないと、手錠の鍵を外しませんよ」
「それは困るけど、あやめさんとかがいる前で……」
「わたくしたちは証人でございますから」
「ボクらが証人になるって言ってるんだから、早く明日菜クンに告白しちゃいなさい
」
意味わかんねえ。この展開、意味わかんねえ。
明日菜ちゃんは俺のことをまだ見つめている。
高まる俺の鼓動。
言わなきゃいけないのか。言うべきなのか。これって言わされてるのか!?
「あの……明日菜ちゃん……」
「はい」
「俺は明日菜ちゃんのことを世界で一番愛してる!」
――長い間があった。そして、明日菜ちゃんが小さく頷いた。
「……わたしも白金さんのことが好きです」
「マジですかマジですかマジですかマジですか!?」
明日菜ちゃんは小さく頷いた。
ローズマリーと固い握手を交わしたあやめさんが俺に最高の笑みをくれた。
「おめでとう御座います光さま。そして、改めましてご紹介いたします。こちらにいらっしゃるのが、紅薔薇派代表の鈴木明日菜さまでございます」
「はぁ!?」
じゃあ、ローズマリーは何者だよ!?
「ボクも改めて自己紹介するよ、ボクはハルカ教の教皇ローズマリー十六世。まあ、これで紅白が統合してくれて、ハルカ教も安泰だね」
「はぁ!?」
俺は意味がわからなかった。
どこからか花火の打ち上がる音が聞こえた。
日が落ちた空に火華が咲き乱れる。
呆然としている俺の顔に明日菜ちゃんの顔が近づいてきて……。
ゴンドラの上から見る水面を彩る花火の影はとても美しかった。
おしまい
作品名:爆々ねこレース 作家名:秋月あきら(秋月瑛)