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なっちょん
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novelistID. 25113
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片山レンジャー 前編

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 それは、斎藤さんが越してきた当日。片山レンジャーは池にある二つの石に土下座して、家主の斎藤吾郎さん(42)に頼み込む。

「片山池が無くなれば、僕ヒーローじゃなくなるんです!お願いします!ここだけは、片山池として残して下さい!!」

 物凄い勢いの土下座に魅せられ、吾郎さんは言った。

「飯いらんなら良いぞ」

「あ、おにぎり一つくらい恵んで頂ければ...」

「よし。今日からこの池、斎藤池だな」

「ああ!冗談です!何も無しで大丈夫!僕、光合成したい年頃なんです!!」

「うむ」

 頷いた吾郎さんに、唯一の家族にして一人娘の恵子ちゃん(17)が助け舟を出す。

「お父さん、いじめちゃ可哀相だよ」

「そうか?だが俺はヒーローが嫌いなのだ」

「あたしも...でもこの人、悪い奴じゃなそうよ」

「はい!人の良さなら負けません!お金貸した翌日に、逃げられた事もありました!」

「あらまぁ」

 目を丸くする恵子ちゃん。

「ふんっ」
 
 鼻で笑う吾郎さん。しかし、二人は片山レンジャーの必死さに苦笑し、了解を表した。

「ね、良いんじゃない?害も無さそうだし」

「そうだな。じゃあ片山レンジャー、あんたの飯はおむすび一個でいいな」

「おおー、ありがとうございます!あ、でも、出来れば、月一でお酒を...」

「よし解った。今日からここは斎藤池だな」

「ごめんなさい!調子に乗りました!!」

「うむ」

 こうして、片山レンジャーと斎藤さん一家は、奇妙な共同生活を始めた。