片山レンジャー 前編
「楽しい...の?」
「はい!僕は片山レンジャーになるまで、人間じゃなかったんです!」
さりげなく重たい発言に、恵子ちゃんの顔は引きつる。
「う、うん」
「でも片山さんが破産して、片山レンジャーは解散...僕はまた物になる所だったんですよ!」
「う、う、うん」
「それなのに、恵子ちゃんと吾郎さんが拾い上げてくれました!人間扱いして頂きました!僕にとって、こんな素敵な事はありません!!」
「あー、うー、そのー」
今度は恵子ちゃんが言葉を探す番だった。その様子を見て、片山レンジャーは自分の過去話は、投げ返しにくい事柄であったと気がつく。
「あ、気を使わせてしまいましたね。僕、頭悪いから大丈夫です。すぐに忘れちゃいます!」
「それ、忘れちゃ、駄目だと、思う、から、その...」
恵子ちゃんはすっと近寄る。そして、片山レンジャーをその胸に抱いた。
「あ」
自分が発展途上と評した胸は、しかし、不思議と落ち着く場所であった。
「むぅ、さっきのお返しだからね」
彼女は頬を赤く染めている。胸の中で、彼が大きく息を吐くのを感じた。
「今まで、つらかった?」
「...はい」
二人は、しばらく無言で過ごした。
つづく
作品名:片山レンジャー 前編 作家名:なっちょん