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過去からの訪問者(6月4日変更)

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「棚橋さんはまだ公表していない筈なのに、どうしてそれを知ってるの?驚いちゃった」
 由美はその発言内容とは裏腹に、何食わぬ顔でそう云った。
「ほ、本当かよ。また自殺したくなりそうだよ」
「中野さん。郵便局に勤めてれば良かったなんて、思ってないわね?」
 由美は中野を睨みつけた。
「思ってないよ。そんなこと。全然、思わないね。今はもう、郵便の時代じゃないからねぇ」
 そう云ってから、中野はトイレへ行くついでにそら豆と生ビールを追加注文した。トイレの中で彼は、電車の中で読んだそら豆に関する文章を思い出し、注文したことを後悔した。
 そこにはこう書いてあった。
 古代ギリシャではそら豆の花弁の黒点が死を連想させたため、そら豆を葬儀に用い、不吉として嫌われることもあった。古代ギリシアの数学者・哲学者で「ピタゴラスの定理(三平方の定理)」などで有名なピュタゴラスは、ソラマメの中空の茎が冥界と地上を結んでおり、豆には死者の魂が入っているかも知れないと考えたという。
 トイレから出た彼は、カウンターの中の坊主頭のマスターに質問した。
「お忙しいところすみません。そら豆を茹でる適正な時間は十分ですか?この前スーパーで尋いたらそう教えられたんですが、首をひねりながらの答えだったものですから」
「沸騰したら酒と塩を入れて二分ですよ。そういういい加減な店員は殺すべきかも知れませんね」
 そう答えて笑うマスターに礼を云ってから、中野は席に戻った。
「清さんはそら豆が大好きなのね。死ぬほど食べたいって思ってるのかも」
「そうだね。死にたいって、思ってるかも知れないね」


                了