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そら豆な日曜日



 油絵のキャンバスと絵の具箱を、環状電車の網棚の上に置き忘れたまま下車してしまった彼は、乗っていた電車が一周して戻って来るまで、駅のホームにあるベンチで待つことにした。
 不幸中の幸いで、今日は意外に湿度が低いようだと、中野清は改めて思った。梅雨明け間近の晴天の日曜日なのだが、暑さはさほどきつくない。
 午後五時前に彼が乗車した駅は有楽町で、下車した駅は品川だった。品川から京浜東北に乗り換えるつもりだった。忘れたものを置いていた場所は先頭車両の進行方向に向かって左側、運転席に近い席の真上だったから、電車が一周して戻って来ればすぐに目視で確認できる筈だと思う。
 何よりも小説が好きな彼は、電車の中で読んでいた文庫本の世界に埋没し、品川駅に着いたときもまだ読み続けていた。すんでのところで発車時刻が迫っていることを報せる電子音に気付き、慌てて立ち上がるとすぐ傍のドアからホームへ飛び出したのだった。
 今日は午後から築地の社会教育会館で、彼は三時間程油絵の制作をした。彼がメンバーになっている「アトリエI」の幹事役を務める棚橋という郵便局に勤める男が、一週間前の日曜日と今日、同じモデルを二週連続で紹介所を通して呼び、裸婦像を描く会が催された。