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CROSS 第18話 『Embassy』

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第3章 侵入



 その日の夜、山口は、先ほどのクライン邸の門の近くにいた。彼
は、特殊部隊が使う黒いマスクを被り、革グローブをしていた。そ
して、夜の名古屋ならすぐ車に轢かれそうな黒い上着をしていた。

 彼はこれから、このクライン邸に忍びこみ、アバーナシーが知り
たがっている情報を入手するのだ。盗むのではなく、彼の頭皮に付
けた髪の毛型隠しカメラで撮影するのだ。カメラの映像を、大使室
のアバーナシーがリアルタイムで観ることもでき、カメラの向きを
操作することもできた。おまけに、小型マイクもついている。
『さっさと忍びこみなさい』
ヘッドセットのイヤホンから、アバーナシーの急かす声がした。
「しかし、門に警備員が」
クライン邸の門の前には、警備員が一人突っ立っていた。
『警備が手薄だから、庭から侵入しなさい』
「了解」
山口は、庭のほうに周りこんだ。
 高い木が何本かあり、山口は木登りして、塀を乗り越えた。塀に
センサーの類はなく、山口は忍びこむことに成功した。たまたま、
そこは、さっき山口が立ち小便をしたらへんで、山口は自分の小便
の跡に気をつけていた。

『うまく庭を横切って、建物の中に入りなさい。風通しのため、
不用心にも、窓が開放されているから』
山口は、誰にも見られていないことを確認すると、庭を全力で横切
り、開放されている窓から、建物に侵入した。

『そこからなら、クラインのオフィスはすぐ近くよ。見つからない
ように気をつけて』
山口は、センサーや監視カメラに注意しながら、目的地へ向かった。
幸い、警備員などに遭遇することもなく、監視カメラなども無かっ
た。
「不用心すぎるな」
簡単に目的地である部屋に着いたとき、山口が呟いた。
『オフィスのどこかに例の書類があると思うから探して』
 例の書類とは、プラントとプラント理事国との間で行なわれて
いる交渉についてのものだ。アバーナシーはクラインから聞きだそ
うとしたが、うまく切り抜けられて失敗した。
 山口は、慎重にドアを開けて、クラインのオフィスに忍びこんだ。
ドアには鍵があったが、ロックされていなかった。
オフィスには誰もおらず、真っ暗だった。山口の目は、コンピュ
ーターアイで、暗視機能もついていた。そのため、明かりはいらな
かった。

 クラインのオフィスは綺麗に整理整頓がされており、山口は探し
づらいと感じた。しかし、10秒おきにアバーナシーが、まだかま
だかと催促するので、少し荒っぽい探し方をし始めた……。