CROSS 第18話 『Embassy』
「トイレに行きたくなってきたなあ」
立派な屋敷であるクライン邸の門の前に、一台の車が止まってお
り、車内にいた山口が呟いた。彼は、アバーナシーが昼食会を終え
て、出てくるのを待っていた。
「漏らすわけにはいかないし、トイレを借りよう」
山口はそう呟くと、車を降りて、屋敷の敷地に門から入っていた。
昼飯を食べに行っているのか、門に警備員はいなかった。
屋敷の敷地は広く、迷ってしまい、広い庭に出てしまった。茂み
があったので、彼はその茂みの中で用をたすことにした……。
アバーナシーは、プラントのクライン議長とランチを食べていた。
アバーナシーはクラインから情報を引き出そうと悪戦苦闘していた。
そこで、アバーナシーはジョークを言って、うまく話を誘導しよう
とした。
しかし、彼女がジョークを話し始めようとしたとき、彼女の口は
開いたまま止まった……。彼女は、向かい側に座っているクライン
の後ろのほうを見ていた。
彼女の視線は、茂みの中に入っていく山口を見ていた……。
「どうしました?」
クラインがアバーナシーに尋ねる。
「……ちょっと、お庭を拝見させていただきます」
アバーナシーは冷や汗を流しながらそう言うと、席を立った。
「それなら、娘に案内させましょう」
「私一人で大丈夫です!」
アバーナシーは庭に出ると、全力疾走で、山口がいる茂みに向かっ
て走った……。
「あの、本当にすみませんでした……」
その後、大使館の大使室には、怒っているアバーナシーと、ぶん
殴られた跡が生々しい山口がいた……。
他人の家の庭で立ち小便していた山口は、用を足して振り返った
瞬間、アバーナシーに殴られたのだった……。
「ちゃんと頼みごとをこなしたら、今回の件はチャラにしてあげるわ。
まあ、どっちにしろ、やってもらうことだけど」
アバーナシーを気を落ち着かせながら言った。
「えっと、頼みごととは?」
山口はおそるおそる尋ねた。
作品名:CROSS 第18話 『Embassy』 作家名:やまさん