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CROSS 第18話 『Embassy』

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第2章 山口の駐在武官時代



【時間軸】 … 異次元暦42732年 1月5日
【場所】 … 通称『ピップ(Pip)』(『ガンダムSEED』の世界)
       『プラント』
       在ピップ大日本帝国連邦大使館 転送室

《この章での推奨BGM》
・Creedence Clearwater Revival 『Fortunate Son』



「ようこそ、『ピップ』へ」

 転送装置を操作している警備兵が、転送装置の上にいる男に言った。その男はたった今、異次元空間からここに転送されてきたのだった。男は、両手に荷物を持っていた。
「この世界はどんな感じの世界だい?」
男は、警備兵に言った。

 その男は、山口だった……。2年ぐらい昔なので、少しだけ若かった。彼は、嫌々ここにきたという表情をしていた。
 彼は、この大使館の駐在武官になるのだ。前の任務でヘマをしてしまい、他の『CROSS』の仲間とは別勤務となったのだ。その仲間であるヘーゲルたちは、現在、別の任務についており、ヘーゲルが指揮を代行している。ちなみに、このときの山口の階級は、准佐(少佐の一個下の階級)だった。

「それほど悪くはないですよ。ここは都会なので、パナマの総領事館よりはマシな暮らしができます。まあ、食糧事情に問題があって、食費がかなりかかりますよ」
警備兵は、山口に説明した。山口は、試しにパンの値段について聞いたが、警備兵が答えたパンの値段に驚いていた。

「その食糧事情の問題って?」
廊下を歩きながら、山口が警備兵に尋ねた。山口はこれから、この大使館の主である大使に、着任の挨拶をするのだった。
「食糧生産がまだ十分じゃないんですよ。この世界についてのレクチャーは受けなかったのですか?」
「一応、受けたが、半分寝ていたからな」
「……そうですか」
「要するにあれだろ。時代に取り残された馬鹿が、うまいことやった奴に嫉妬して、争っているんだろ?」
「……まあ、感じかたは人それぞれですね」
山口の発言に、警備兵は返答に戸惑っていた……。


 大使室に向かって廊下を歩きながら、山口は、大使館にあるいろいろな部屋をのぞいた。部屋の廊下側の壁はガラス貼りになっており、外側のミラーガラスまで見渡せた。そのミラーガラスの向こうには受付があり、担当者が邦人の相手をしていた。今、受付にいるのは旅行客らしく、パスポートを無くしてしまったようだった。
 どの部屋にも、多くの職員がおり、どこかに電話したり、コンピューターを操作していた。ピリピリした空気を、廊下でも感じることができた。

「緊迫していますからね。外務省の連中は大変みたいですよ」
山口と警備兵は、大日本帝国連邦陸軍省の所属だった。