アトリエの恋
「大成功」
その刹那、阿坂はさやかに口づけをした。長い口づけになった。阿坂は柔らかいさやかを抱きしめた。
「大成功」と、阿坂も離れてから云った。
「浩樹さん、やっぱりスケベだったのね」
さやかは涙声で云った。
*
山の天気は気まぐれだった。翌朝は青空が見えなかった。午前七時前に出発したとき、山小屋に残っていたのはひとくみのカップルだけだった。
その先の縦走路は、一旦これまで稼いだ高度を吐きだすように下降したが、その後また登り返す。
「頑張ってね」
「うん。頑張る」と、さやかは笑顔で応えた。
最初に登りつめたその笹原では、火照った体を爽やかな風が冷やしてくれて大変気持ちが良かった。