アトリエの恋
漸く空が暗くなって最初のスターマインが高く打ち上げられた。赤、青、紫、緑、黄色、白の花火が夜空を華やかに彩る。大観衆の歓声と拍手の音と、どよめきが広がった。
刻一刻と迫力が増して行き、港全体を喜びと興奮のるつぼにした。阿坂の手を握るさやかの手に力が込められた。二人は花火の色に染められる互いの顔を、微笑みながら凝視め合った。
阿坂が以前観たときは、煙が邪魔ですっきりとした花火ではなかったような気がする。今日は風向きが良くてそういうことがなく、文句なしの美しい花火である。
「来て良かったね!」
「幸せよ!ありがとう」
単発の打ち上げ花火になった。遅れて来る炸裂音が遥かな空間にまで木霊する。
新しいビールをひとくち飲んでから阿坂は云った。
「まだ五号玉だな。これから段々大きいのが上がるぞ」
「そうなのね。これから大きくなって行くのね」