アトリエの恋
「浩樹さんと、一緒に登ってみたいわね」
「うん……山で見る星は凄いよ」
「そう。どこかの山に連れてってね」
「梅雨明けの頃がいいかな」
「あっ!雨だわ」
雷鳴が轟いた。
「行こう」
阿坂が立ち上がるとほぼ同時にさやかも立ち上がり、手を繋いで走りだした。公園の近くの屋根つきのバス停まで走ると、ちょうど路線バスが来て停車した。先にさやかが乗車したとき、阿坂は背後に何人かの若い男女が驟雨の中を走って来るのに気付いた。
「運転手さん。発車を少し遅らせてください」
「困ったな。少し遅れてるんだよ」
「そう云わずに、お願いします」
「急な雨だからね、一分だけ待つよ」
「ありがとうございます」
既に座席で待っていたさやかが云った。
「浩樹さん。いいひとね。好きよ」