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コゴトノヤ
コゴトノヤ
novelistID. 38441
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空 —ソラ—

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「疲れた~っ!」
私は家に帰ると真っ直ぐベッドに飛び込んだ。
今日は私の担当する雑誌の締切で、編集部はてんてこ舞いだった。
もう、三日はまともに寝れていない。
「……今回も編集長は鬼だったな……」
普段は温厚な人なのだが、締切前になると、別人の様になる。
『締切前の悪魔憑き』『編集部の鬼』……なんてあだ名が付いていたりして。
——そんな事を思いながら、足で布団を引き寄せる。昔から足ぐせが悪いとよく言われていたが、一向に治る気配は無く…というかむしろ悪化しているような気がする。
今日もこのまま寝てしまいそうだ…。
安物のスーツとはいえ、シワになってしまう。
疲れが溜まった私を、久しぶりのベッドが癒してくれる——。
そんな至福の一時、ベッドから出られなくなった私は、何となく、まあいいや、という気分になる。(……すでに安物スーツの幾つかは、その“まあいいや”でシワだらけになったままだ)
編集部に勤め始めてはや四年。こんな生活にも慣れつつあった。
作家志望だった私が、編集部で働く事になったそもそもの原因(という言い方はヒドイのかも知れないが)は、一人の編集さんとの出会いだ。
二十歳になり、初めて“持ち込み”をした際に
「ん~、なんか文章が新聞記事みたいなんだよね……。君、小説家なんかより報道雑誌とかの記者の方が向いていると思うよ?知り合いが雑誌記者を探してるから、そっちの面接、受けてみる?」
と言われて、今の職場を紹介された。
幸運だったと思うし、最近では後輩もできて、充実した毎日を送っている。
が、やはり夢が諦められず、今も暇な時には小説を書いていたりする。
ようやく眠りに就こうという時、遠くでチャイムが鳴った。
「ピンポンピンポン」
どうやら私の家だったらしい。は……い、と返事をしたものの、聞こえたかどうかあやしい。
作品名:空 —ソラ— 作家名:コゴトノヤ