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タマ与太郎
タマ与太郎
novelistID. 38084
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クラインガルテンに陽は落ちて

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第7章 約束



 毎日のように梅雨空が続き、僕は鬱陶しい気分で通勤を続けた。週末になると本格的な雨降りとなり、フラストレーションは溜まる一方だった。
 新しい会社に入って2ヵ月半が経ち、そろそろ緊張感が途切れたせいか僕は風邪を引いた。医者に診てもらい薬を処方された。せっかくの週末なのにベッドで横になりながらぼんやりと外を眺めた。こんな日に限って、午後になると雨が止んで薄日が差してきた。
「今日由樹さんは来ているだろうか。パンクは直したのかな」
 僕はそんなことを考えながら妻が入れてくれたお茶をすすった。
 7月の半ばになり、関東地方の梅雨が明けた。今年は例年より1週間程度梅雨明けが早かった。僕は待ちに待ったクラインガルテンに向かった。足取りが軽いのは土に触れることだけが原因ではない。今日は由樹に会えることをなぜか確信していた。
 クラインガルテンに由樹の姿を見つけ、僕は周りの景色が見えなくなった。
「こんにちは。パンクは直しましたか?」
「こんにちは。先日はありがとうございました。パンクは直しましたよ」
 僕は麦藁帽子の下から見える由樹の白い歯が、いつもと少し違うことが気になった。
「しばらくお見えになりませんでしたね」
「ええ、風邪を引いたり、女房の買い物に付き合ったりで…。あれ、髪を切りましたか?」
「はい、暑くなってきたものですから」
「お似合いですよ」
「ありがとう」
 僕はいつものように雑談が続くのかと思ったが、由樹の言葉で状況が変わった。
「向こうの木陰でお話しませんか?」
 この炎天下での立ち話もきつかったので僕は即座に同意した。僕たちは木陰の側道に並んで座った。由樹はゆっくりと、そして決心したように話を切り出した。
 由樹が話し終わって、僕はなぜ自分がこんなにショックを受けているのかが分からなかった。最近受けたショックの中ではかなり大きかった。