ありんこ探検隊
「あ、ジィさんの部屋はもう使えるぜ。休ませてやらないとな。なんせ年寄りだからな」
「ジィちゃんは年寄りじゃなく、長老なんだ。何度言ったら…」
「はいはい、蟻サンの大好きなジィさんだもんな。案内してやれよ」
蟻サンは、長老の蟻衛門ジィを連れて巣穴の奥へと入って行った。
「蟻ーダさん。女王蟻様と赤ちゃん達はお部屋に入りました。長旅の引率、おつかれさま。とても素敵なところですね。私、ここが気に入りそうです」
「それは良かった。あ、蟻ッサ」
「はい。なんですか?」
蟻イチの言ったことが頭をよぎったが、その言葉は飲み込んだ。
「あ、夕陽が綺麗だよ」
「まあ、本当!皆にも教えてあげなくちゃ」
「待って、蟻ッサ」
蟻ッサの前足を掴んだのを はっと離すと蟻ーダは夕陽を見つめた。
「私が、探検隊のリーダーでなくなっても、そのぉ……」
「はい。お傍におります。そして 一緒に夕陽を見つめたいと思い…あら?」
蟻ッサが振り向くと、蟻ニイ、蟻サン、蟻ヨン、蟻ゴウが笑顔で見ていた。
その横で そっぽを向いている蟻イチもいた。
「蟻ッサちゃん良かったね」
蟻ゴウが小さな花びらに集めた甘蜜を差し出した。
「ありがとう。まあ美味しい」
「此処に住むアリマキさんたちがくれるんだよ」
「とっても…こしょ…いい…こしょでしょ」
「そうね。みなさんでもっと素敵な場所にしましょう。ね、蟻ーダさん」
蟻ーダは周りを見渡した。
巣穴から覗く顔。そして一緒に探検した仲間の顔はみんな綺麗な茜色に染まっていた。
― 了 ―