ありんこ探検隊
巣を出発してひと山越えた頃、一番後ろの蟻ゴウが、蟻ーダの元へ走り寄った。
「キュル」蟻ヨンは飛び跳ね、声を上げた。
蟻ーダは、振り返り、蟻イチ、蟻ニイ、蟻サン、蟻ヨンに止まるように合図した。
「どうしましたか?」
「あ、蟻ッサちゃんの差し入れがとてもいい匂いで我慢ができないよ。であります。」
「おいおい何だよ?」
一列の隊列から、蟻ニイが顔を覗かせた。
「蟻ゴウ、みんな、巣の期待を背負って緊張しているんだ。もう少し我慢できないか?」
「そ、そっか…でも…。そっ女王蟻様もきっと旨いうちに食べて欲しいはずさ」
「素晴らしい説得力だね」蟻ーダは苦笑した。
「ぼくも気になって歩けないよ。蟻ーダ、蟻ゴウに賛成!」
蟻サンの頚を傾げて大きな瞳を見せた。
「全く。どう思う?蟻ッサさんのお兄さん」
腕組みをして聞いていた蟻イチが、腕をほどき驚いた表情をした。
「わ、私ですか?蟻ッサはただ使いに出されたわけですから蟻ーダの決めたままに」
「ははは。みんな同じか。実は私もなんだ。でもここじゃあ足を止めても邪魔になる」
蟻ーダは、背伸びをして辺りを見回した。
「あ、あそこが良さそうだ。あの丘まで出発だ!」
「やったー!!」
4匹が飛び跳ねる。蟻ヨンだけはその振動に弾んでいた。