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忘れていた風景

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渋滞の帰り道



 翌朝、中野が起きたのは午前七時だった。前夜は意外に寝つきが早かったらしい。疲れていたのだと、彼は思った。
 美里は既に温泉に入っているらしい。そんな気配を、中野は感じ取っている。それとも、湖畔をひとりで散策しているのだろうか。
「湖の周囲には、ノリウツギ、オオカメノキ、ウダイカンバなどの広葉樹と、コメツガ、ウラジロモミなどの針葉樹の原生林があり、変化に富んだ手つかずの自然を満喫できる」
 昨夜の夕食のとき、食事と一緒に届けられたガイドマップにはそう書いてあった。
「南岸の滝のそばには、アズマシャクナゲの群落があり、五月、六月に花を楽しむことができる。また東岸には半島が突き出て小さな湿原があり、ワタスゲ、ツルコケモモなどが生育している」
更に、「湖周辺は野鳥も多く、冬は湖面にマガモ、キンクロハジロ、ミコアイサ、ヒドリガモなどの姿が見られる。ここには温泉のほかに、ハイキング、釣り、キャンプ、スキーなどの楽しみを求めてくる人も多い。誰もが自然と親しみながら楽しめる、新しいレジャー地区へと変身している」
 そんなことも書かれていた。
 そのとき、突然美里が現れた。湯あがりの美里に、中野は云った。
「ここはいいところだなぁ」
「来年の夏に、また来たいわね。どうぞ、温泉へ……」
 
作品名:忘れていた風景 作家名:マナーモード